2022.05.18

白戸 太朗選手の2022 アイアンマン世界選手権レポート

トライアスロン界のレジェンド 白戸 太朗選手から 先日 アメリカ ユタ州 セントジョージにて開催された 2022 アイアンマン世界選手権の参戦レポートが届きました。
Giro 最新ヘルメット ECLIPSE SPHERICALを使用しています。

3シーズンぶりに開催されるアイアンマン世界選手権

私自身も2年半ぶりのアイアンマンでありトライアスロンでもあった。
そんな久しぶりのレースを、多くの方のサポートによりちゃんと走ることが出来ました。
あらためて感謝いたします。

それにしても、これだけ間隔があくと、自分が本当にちゃんと競技できるのかという不安があり、準備しながらも、いつもと違った感覚。トライアスロンを初めてから35シーズン目で、それまでは年間最低でも8レース程度は走ってきたわけで、これだけ空いたのも初めて。ある意味初心者に戻ったようなものなのかもしれない。そんな新鮮な気持ちで取り組むレースが、世界で最も厳しいと言われるセントジョージのアイアンマンというのは何かの巡り合わせということなのだろう。

Preparation for the race

レースに向けての準備として、この冬はマラソンに目標を置いて取り組んできた。マラソンも久しぶりだったので、なんとかサブスリーをと取り組んだが、結果としてはレースでは上手くいかなかった。しかし、ある程度走りこめたし、取り組めた感覚もあり、ランにおいては不安はない。またスイムもコンスタントに出来ているので、まあこちらも不安要素は少ない。ただバイクにおいては、冬の間ほぼ乗っておらず、マラソンを終えてからの取り組みで、まだ日が浅い。そのため、ここに関しては厳しいコースを走れる想像がつかず、丁寧に走ること心がけることに。

スイム会場は郊外の大きな貯水湖。水温が15度程度しかなく、レース2日前には気温も低かったこともあり、相当冷たいし、それ以上に上がってきた時に体が冷え切って動かない。
しかし、日が出てくるとその日差しは強く、かなり暑くなる。早朝の寒さと日中の暑さ対策が一つの課題で、おまけに強風まで吹いてくれる歓迎ぶりだ。
さらにバイクコース、ランコースともに平坦パートを探すのが難しく、かなりダメージが大きい。中でもランコースの厳しさはアイアンマンの中でも群を抜いており、ある意味世界選手権にふさわしいのかもしれない。

まずこの低温対策。ウエットタイプのソックス「ブーティー」を準備。低温時に許可されるもので、もちろん今回も許可され使用。これだけで足先の冷たさから解放され、かなり心強かった。さらにウエットキャップも準備。低温時は頭が冷えると一番やられるので、かなり心強い。スイムキャップ2枚というのもやってみたが、ウエットキャップの安心感は絶大で、そのあとの長旅を考えるとこちらも採用した。

Raceday

朝の4時半に町のバス乗り場からバスに便乗し会場へ。今回は3000人を超える参加者なので、その規模が半端ではなく、選手のコントロールが大変。ただ、地元も関係者も大会慣れしているので、不安感はなく進んでいく。ただ、やはりかなり早い時間なので、当日は3時半起き。そして現地についてからも2時間近くある訳で、現地についてから待ち時間をどのように快適に過ごせるかという準備も大切。体が冷えないように、少し厚着をしてバスに乗り込んだ。
トランジッションの傍らで、座り込みゆっくり時間を過ごし、ストレッチなどの準備。こうしたときに、自分のペースで準備しないと、周りに惑わされると落ち着かない。スタート時間に対し、自分のやること、時間配分をある程度決めておくことが大切だ。

Swim

長い待ち時間からいよいよスタート。当日は少し気温も上がったこともあり、さほど寒さを感じることなく泳ぎだすことが出来た。久しぶりのアイアンマンに挑める幸せを感じながらじっくりと。今回の勝負ポイントはランがきちんと走れるかどうか。そのために厳しいバイクコースを無理なく走ることが重要。そう考えるとスイムなどウォーミングUPと考えないと力が入りすぎてしまう。予定通り、周囲の景色を見ながら、落ち着いて泳ぐことが出来た。

Bike

装備のおかげで、あまり冷え切ることもなくバイクスタート。それでも風は冷たく、聞いたところによると冷え切ってしばらく動けない選手もいたとか。やはり最低でも1時間は水の中にいる訳で、低温対策は必須であることは間違えなかった。
スタートし、いきなりアップダウンが始まるが、そのあとやってくる厳しいコースを考えると、前半70㎞まではあくまでもその助走と考えていた。70㎞超えてからきちんと走れなければ意味がないので、はやる気持ちを抑えてじっくりと。それでも周りが沢山いるので、どうしても他人に惑わされてしまうのが、アスリートの性!?


徐々に太陽がエネルギーを増し暑くなってくる中、90㎞付近で内側広筋がピクピクとし始める。この程度の強度で悲鳴を上げるなんて情けない奴と最初はののしっていたけど、その悲鳴が少しずつ大きくなり始める。別にこれ自体はアイアンマンにおいて珍しいことではないので、脚に負担をかけないように走るも、アップダウンの連続でそれも限界があり、100㎞過ぎで、いったん止まってストレッチ。ここで大きく痙攣させえてしまうと、長いこの先に大きく響く。その後も上りになるたびになだめすかしながら走る展開。それでも、下りでは攻めることが出来たのが救いで、長い下りで風を切り、それでいて通気性と軽さを併せ持つエクリプスをチョイスしたことは大きなアドバンテージ。暑く、厳しい上りと長くスピードの出る下り。まさにこんなコースのためにできたヘルメットでした!? 


そして最大の山場はラスト20㎞の上り。これが意外に長く斜度もある。久しぶりにレースを止めたくなったけど、ここで止めても帰るためには走るしかない訳で、とにかくバイク終了までと奮い立たせてバイク終了。

RUN

ランシューズに履き替えて、1歩目に脚が動かないことに気が付く。やはり痙攣のダメージが残っているか…。これは長いランになりそうだと覚悟を決めて静かに走り出すが、やはり痛くて走り続けられない。少し走って歩いての繰り返しで2㎞までこなす。
ちなみにここのランコースは2周回で、平坦は1周で800mほど。全体で1.5㎞程度しかない訳で、あとは上りか下り。周辺でも走れなくて苦しんでいる選手を多く見かける。


こういう時は上手く諦め、最後まであきらめないのが重要。つまり、速く走ることはあきらめないと自分自身のメンタルが辛いし、やり続けられなくなってしまう。なのでその目標は早々にあきらめることが肝心。でも、進むことは諦めず、じっくりと進めていると、カラダが動く時間帯もやってくる。だから慌てず、じっくり粘ることが大切なのだ。
すると、2㎞を超えたあたりから少しずつ走れるように。まあ考えれば、この冬のラン練習は多少なりともできている。きっと何とかなるはずと信じ、取り組んできた体の動き作りを意識しながら。すると少しずつ調子が戻ってきた。HOKAのマッハのクッション性が脚を守ってくれているのがよく分かる。そのまま無理をせず、でもペースを崩さず。2週目に入る頃には、前を行く選手たちをどんどんと捉えられるように。こうなると気持ちも上がってくる。結果的に最後まで集中して走りきることが出来た。

タイム的にはまったく大したことのないものではあったが、この厳しいコースをこの状態で最後まで集中して走れたことは大きな収穫だった。このレースは他人と戦っているのではなく、自分自身と対峙し、付き合い方を探していくもの。途中何度も諦めそうになりなが
ら、最後まで付き合うことが出来た。

翌日、今年の世界選手権であるKONAのスロットを確保することが出来た。
これは正直想定外だったが、驚きの獲得に嬉しい反面、またあの思いをするのか~と思うとちょっとげっそりしたりして!?

3年ぶりのトライアスロン、3年ぶりのアイアンマン。
多くの方のサポートがあったからこそ、きちんと走れました。
準備は嘘をつきませんね。
本当に有難うございました!


白戸 太朗選手活動情報はこちらから Twitter

GIRO ECLIPSE SPHERICAL AF

スペック

  • サイズ  S / M / L
  • 重量  275g(Mサイズ)
  • フィットシステム  Roc Loc® 5 Air
  • ベンチレーション  14箇所
  • 構造  インモールドポリカーボネートシェル / EPSライナー
  • テクノロジー  Spherical Technology™/ EPS foam / Ionic+™ anti-microbial padding
  • 価格 39,600円(税込

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