1000分の2秒、想像のつかない「速さ」ですが、果たしてどれくらい速いのでしょう? 人間の瞬きの100倍の速さ、ハチドリの羽ばたきの10倍の速さ… 本当に僅かな瞬間ですが、衝撃の際はこの一瞬があなたの一生を左右する事になる重要な一瞬になります。
また、この僅か1000分の2 秒は脳に障害を与えるのに十分な時間でもあります。我々はこの1000分の2秒の間に何が起きているのかを徹底的に追及し、どうしたらライダーの頭を保護することが出来るかを日夜考えています。
我々の長年に渡る経験がこの最新のヘルメットで大きな成果を出していますが、まずは初心に戻り、あなたの脳から始めましょう。
脳は体の中で最も重要な器官だと我々は考えています。思考、感覚、伝達、もっと言えば、呼吸さえも脳がコントロールしています。あなたの脳はあなた自身なのです。
そして脳はとても繊細です。この1.5キロの灰色の物質と神経細胞は完全には守られていません。頭蓋骨は脳を障害から最初に守る役割を担います。頭蓋骨と脳の間には脳脊髄液という液体があり、クッションの役割を果たします。
人間なら誰しもが持っているこの防衛システムは、はるか昔人類が狩猟をしていた時代では十分なシステムであったかもしれません。しかし、走るよりも遥かに速いスピードでジャンプし、ハンドルの上で足を交差するトリックで着地に失敗した時、この防御システムはあまりにも非力です。
全てのGIROヘルメットは衝撃の際に変形(破壊)し、脳に伝わるエネルギーを減少させるライナーで作られています。2重の頭蓋骨のような役割と考えてください。そしてさらに新しいヘルメット技術として登場したのがMIPS( Multidir ectional Impact Protecti on System) 多方向衝撃保護システム。衝撃エネルギーを分散させる先進技術で回転エネルギーをより減少させる事ができます。
2回クラッシュした場合、その2回が全く同じということはあり得ませんが、
大きく分けると2つのタイプ≪直線的な衝撃とねじれ衝撃≫ があり、脳障害のほとんどはその2タイプから起きています。
現実に起こる衝撃のほとんどは直線的な衝撃とねじれの力が合わさっているものです。
直線的な衝撃(LINEAR FORCES)
通常頭が真っ直ぐに動いている時に急停止した場合、または真っ直ぐに動いている物質にぶつかった場合に起こります。実際このシステムは1000分の2秒に数ミリしか回転しませんが、この僅かな動きが脳に伝わる回転エネルギーを減少させることを可能にします。
ねじれ衝撃(ROTATIONAL FORCES)
頭が斜角で衝突した場合や、回転しながら衝突した場合に起こり、これが脳を頭蓋骨の内部でねじれさせ脳障害に繋がります。
わかりやすく例えると
テニスボールを地面に投げたとしましょう。地面に落ちる際、ボールと地面には共に十分な摩擦が生じているため、ボールは強い回転エネルギーを受けて跳ね上がります。
(イラストA )
次に同じボールをよく磨かれて濡れた氷に投げた場合、ボールに起きる回転エネルギーは両者に発生する摩擦が少なく弱いため、はるかに少なくなります。
(イラストB)
上のイラストは力を矢印で表した2つのシナリオです。地面をバウンドするボール(イラストC)には3本の矢印ありますが、よく磨かれて濡れた氷にボールがバウンドした場合(イラストD)は、いくつかの力は前方に方向転換します。
MIPS搭載のヘルメットには3つのコンポーネントがあります。
【インテリアフォームライナー、低摩擦ライナー、それら2つのライナーをつなげるエラストメリック付属システム】衝撃の際エラストメリック付属システムは、インテリアフォームライナーが頭の周りをスライドして動くようにデザインされています。
実際このシステムは1000分の2秒に数ミリしか回転しませんが、この僅かな動きが脳に伝わる回転エネルギーを減少させることを可能にします。
MIPSヘルメットの低摩擦ライナーは斜角からの衝撃の際、内部のライナーと外部のシェルを独立して回転させ、衝撃を緩和するように設計されています。
我々は何年もMIPSのデザインチームと研究を行ってきました。
MIPSの技術はストックホルムのスウェーデン王立工科大学とカロリンスカ病院の学者達による19年の学術研究によって生みだされました。徹底的な研究とテストの結果、衝撃を受けた際、この技術を搭載したヘルメットは頭部を保護する能力がアップすると確信しました。
この理由により、我々は2016スノーヘルメットラインにもMIPS技術を搭載したモデルを発表したのです。全てのGIROヘルメットは厳しい安全基準を充分クリアするようデザインされています。
これらを「トータルエネルギーマネージメント」と呼び、日々進歩しているヘルメットに、より衝撃エネルギーを減らす技術を搭載するために、我々が使用しているガイドラインになります。
頭を保護するヘルメットのデザインや技術に「絶対」はありません。ただ、衝撃が少なければ少ない方が良いという事実だけです。脳に伝わるエネルギーが少なければその分頭を保護する事となります。