ブッシュとは | 潤滑油 | 開発とテスト

2つのものが接すると、そこには何らかの摩擦が生じます。特に部品同士が滑る構造では、熱やスティクションが発生し、動きを妨げる原因になります。

サスペンションでは、ストローク中の一瞬の引っ掛かりや停滞が、厳しい突き上げや鈍い反応として感じられます。原因はひとつではなく、調整、テスト、改良を続ける必要があります。RockShoxの摩擦低減を支える主な要素は、ブッシュとロワーレッグの潤滑です。

ブッシュとは、何をする部品?

ブッシュは、ロワーレッグに組み込まれるTeflon™ライニング付きのアルミ製スリーブ。アッパーチューブとの接触部分を受け持ち、潤滑油とともに油膜を作って、チューブを滑らかに動かします。左右に2個ずつ、合計4個あり、上側はダストワイパーシール直下、下側はロワーレッグのほぼ中央付近に配置されます。

2023年のラインアップではブッシュ間の距離を広げ、Ultimateでは下側ブッシュ自体も長くしました。

「ブッシュオーバーラップ」は、この説明では同じレッグ内にある2個のブッシュの間隔を意味します。間隔を広げると、衝撃時に各ブッシュへ加わる横方向の荷重が小さくなり、摩擦を減らせます。2023年のフォークでは、下側ブッシュを下げることで実現しました。

では、上下端へ最大限離せばよいのでしょうか。下側ブッシュの位置はトラベル量によって制約されます。伸び切った状態でもアッパーチューブとの接触を保ち、外れてしまわない位置が必要です。

エンジニアJon Wattは、間隔だけでなくブッシュの長さも検証しました。「短いブッシュのほうが摩擦が少ないのでは、と考えましたが、結果は逆でした。」

下側ブッシュを長くし、上側の位置を保つことで、中心間距離も拡大。長さと配置の両方から摩擦を減らし、2023 Ultimateの滑らかさを高めています。

Maxima Plush Dynamic
Suspension Lube

ブッシュだけで低摩擦は完成しません。潤滑油がブッシュとアッパーチューブの間に油膜を作り、面同士の接触を滑らかにします。路面の薄い水の層をタイヤが滑るように、ロワーレッグの潤滑油が両者の間に働きます。

2023年のフォークに合わせ、Maxima Racing OilsとRockShoxが共同開発したのがPlush Dynamic Suspension Lubeです。整備間隔のあいだ、フォークの性能をできるだけ保つことを目指しました。

「低摩擦は常に追求していますが、よい潤滑油には多くの条件があります。ほかの要件も満たし、あとで思わぬ影響を生まないように、バランスさせることが大切です。」
— Skyler Teachout

開発とテスト

Skyler TeachoutとシニアテストエンジニアBrian Hatinは、従来の0W-30から残したい特性と、改善したい特性を整理し、既存の潤滑油を基準に試験を始めました。

潤滑油は滑りを助けるだけでなく、摩耗も抑えます。適度な粘度を持ち、広い温度範囲でその粘度を維持し、接する部品にも適合すること。その組み合わせを得るには、設計、試験、試作、実走を繰り返す必要があります。

Maximaと試したサンプルには、厚すぎるもの、薄すぎるもの、内部表面との相性がよくないものもありました。有望なものを絞り、環境試験室で温度条件を変えて評価します。

実際の自然条件での感触も重要です。氷点下のコロラドの冬、Hatinはフォークをガレージで一晩冷やし、翌朝早くに銘柄を伏せた比較試験を行いました。停止した面の静止摩擦だけでなく、動いている面の動摩擦も評価。低温の影響を受けやすい動摩擦に注目し、寒くてもよい特性を保つ候補を絞りました。

同時期、別のメンバーは新ダンパー、新エアスプリング、ButterCups、長いブッシュを持つシャーシを開発していました。新型コロナの影響で別々に進めていた作業を、完成したフォークとしてまとめ、実走で確かめます。

ところが最初の1時間で、全体のまとまりが不足していることが分かりました。ダンパー、スプリング、潤滑油を切り替えて走り、振り返る。その中で潤滑油を変えるとフィーリングが大幅に改善し、チームは明確な方針を持ってコロラドへ戻りました。

Maximaと試した配合は合計17〜18種類。すべての条件を満たす「ちょうどよい」配合を探す過程で、フォーク全体の働きについても新しい知識が得られました。多くの部品をつなぐのが、ロワーレッグの潤滑油だったのです。

「潤滑油には調整ノブもステッカーもないので、気づかれにくい存在です。でも、製品の性能への貢献はとても大きい。今のフォークの摩擦や感触、その大きな部分をMaxima Plush Dynamic Suspension Lubeが支えています。」
— Jon Cancellier

新しい潤滑油、広いブッシュ間隔、Ultimateの長いブッシュが連携し、新品のような滑らかさを長く保ち、引っ掛かりの少ないストロークを目指します。

本記事が紹介するPlush Dynamic Suspension Lubeは、0W-30を使用していた箇所との後方互換性を持ちます。実際の使用箇所・量は、お使いのフォークのFront Suspension Specifications Manualで確認してください。ブッシュ単体の交換ではなく、対応するロワーレッグの交換が必要となるため、2023 Pike/Lyrik/ZEBの適合は公式資料をご確認ください。

公式サービス・仕様資料 2023 Fork Collection FAQ ButterCupsのしくみ DebonAir+のしくみ

レンダリング:Ray Bach
写真:James Stokoe、Mason Mashon、Maxima Racing Oils
文:Sarah Walter