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その答えは、レースのあとにあった。
2024 BoXXerの開発ストーリーは、2021年ダウンヒルワールドカップ最終戦のスノーシューから始まります。岩と根が続くコースでの2連戦。その後に行う2日間のテストへ向け、開発・テストエンジニアたちは試作BoXXerと計測機材をSRAMのトレーラーへ運び込みました。
Trek Factory Race、RockShox Trek Raceの選手とメカニックが、すでに2度レースを走った同じコースで、新しい38mm BoXXerを比較します。選手ごとの試作フォークにData Acquisition(DAQ)システムを装着し、シャーシの曲げ・ねじれ、剛性、振動、ホイール速度を計測。そのデータは、ラボのシミュレーションマシンの走行条件にも活かされました。
開発当初、チームは設計がほぼ完成に近いと考えていました。同じチームが進めていた2023年の新技術は好評で、ButterCups、Charger 3、専用のDebonAir+を長いBoXXerシャーシへ組み込めばよいと見込んでいたのです。シャーシを大径化して剛性を高めることも、大きな目標でした。
ところが、実際に得られた剛性は高すぎました。現地で選手の声を聞いたJon WattとJon Cancellierには、「厳しい」「トラクションを探してしまう」「小さな凹凸で手が疲れる」という反応が繰り返し届きます。
同じ感想でも原因はスプリングやダンパーかもしれません。そこで各要素を切り分けて検証しました。ねじれや曲げに対して硬すぎると、岩などにはじかれ、手には厳しさとコントロール不足が伝わります。逆に柔らかすぎると、フォークがバイクの下へ巻き込まれる感覚や、固有振動数による振動が現れ、強く攻めたときの支持力を失います。
適切な剛性なら、岩の間を通り、小さな凹凸を吸収しながらラインを正確に保てます。チームはスノーシューを離れ、その後18か月をかけてBoXXerのあらゆる部分を再設計しました。
「エアスプリングなのか、ダンパーなのか、シャーシなのか。ひとつずつ分離しました。シャーシなら内部を同じにして剛性だけ変え、比較して好みを探しました。」
— Jon Watt
シャーシの更新
シャーシの性能には、外力でねじれる量を左右するねじり剛性と、前後方向の動きを左右する曲げ剛性が大きく関わります。前者は横方向の入力やロックガーデン、後者は急斜面で強くブレーキをかける場面などで重要になります。
曲げ剛性は主にアッパーチューブとクラウンで決まります。ダブルクラウンがDHレースに適するのも、シングルクラウンより高い剛性を得やすいためです。Jon Wattは有限要素解析(FEA)で応力の集中する部分を調べ、必要な場所で肉厚を薄くし、狙ったしなりを与えました。
ねじり剛性は、主にロワーレッグのアーチが左右します。複雑な曲面を持つロワーレッグは試作しにくいため、FEAと応力解析をもとに材料を削り、まずテストで安全性と効果を確認してからライダーへ渡しました。
「どこから材料を取り除くべきか、解析に多くの時間を使いました。重量に対する強度と剛性を最適化し、必要な場所だけに材料を置く。軽さと安定性を両立するためです。」
— Jon Watt
ロワーレッグを交換し、クラウンを調整し、また走る。削り、走り、測り、繰り返すうちに、ライダーの評価とラボのデータが一致し始めました。求めていた、ちょうどよいシャーシへ近づいていきます。
グラフの赤は最終的に選んだねじり剛性と曲げ剛性の組み合わせです。2019年の市販BoXXer、2021年のレース仕様、そして右端の硬すぎたスノーシュー試作品と比較しています。
DebonAir+
ツインチューブ構造
シャーシと並行して、エアスプリングも作り直しました。アッパーチューブが35mmから38mmになると、内部で加圧するスプリングの感触も変わります。最初の試作は中間域の支えが弱く、終盤で立ち上がりすぎるカーブでした。
求めたのは、リニアで一貫した反応。しかし大径のチューブ内では、ピストンとシャフト径の比率を調整するだけでは足りません。そこで、カートリッジのようにもう1本のチューブを内部へ加える、ツインチューブ構造を採用しました。
内部のチューブでピストン径を小さくし、従来10mmのエアスプリングシャフトは14mmへ大径化。シャフトを中空にしてネガティブチャンバーを広げ、ピストン上部の形状と中空トップキャップも使って、ネガティブ容量をできるだけ確保しました。ポジティブ/ネガティブチャンバーの基本
さらに45mmの高さを持つジャウンス・ボトムアウトバンパーを追加しました。SIDのスプリングと同じ考え方で、ストロークの最後に作用し、フルトラベルを使う際の強い衝撃を和らげます。
結果は、動き始めが軽く、小さな凹凸を吸収し、中間域ではダイブを抑える支持力を持つスプリング。終盤も比較的緩やかな立ち上がりでフルトラベルへ到達し、使い切る際はバンパーが衝撃を支えます。
摩擦:Oil Flow Portsと
クラウン高さの目盛り
エアスプリングのカートリッジ化により、摩擦を減らす新たな方法を試せるようになりました。ロワーレッグ内に収まるアッパーチューブへOil Flow Portsを設け、底部で潤滑油を取り込み、伸び切りに近づくにつれて内部へ戻します。
連続してオイルを循環させ、ブッシュの潤滑を維持することで、テストでは全体の摩擦が減少しました。このポートは、ロワーレッグ内の空気をほかの内部空間へ移動させる役割も持ち、スプリングカーブの仕上げにも貢献しています。
もうひとつの摩擦の原因は、チューブの芯ずれです。ダブルクラウンのBoXXerは、多くのフォークのようにクラウン・ステアラー・アッパーチューブが一体ではありません。車体へ取り付けた後、位置を合わせ、指定トルクで固定する必要があります。
クランプ時の力でチューブがわずかに傾くと、長いトラベルの先、ロワーレッグに入る位置ではずれが大きくなり、摩擦につながります。これを抑えるためクラウン設計を更新し、高さを目で合わせられる目盛りと、新しいボルト締め付け順序を用意しました。
最適な取り付け結果を得るため、実際の作業はBoXXer User Manualの手順に従ってください。
Charger 3とButterCups
2023年のフォークで登場した2つの技術も採用しました。UltimateのCharger 3 RC2は、High/Low Speed Compressionを独立して調整できます。ベースモデル用の新しいCharger 3 RCでは、リバウンドと単独のコンプレッション調整が可能です。
Pike、Lyrik、ZEBで登場したButterCupsは、UltimateのBoXXerでもダンパー側・スプリング側のシャフトに搭載されます。金色のケース内にゴムのパックと金属プレートを収め、手や腕へ伝わる高周波・低振幅の振動を吸収。疲労や痛みの軽減を目指しています。
よいものには、時間がかかる。
「更新されたものを受け取るたびに、BoXXerはよくなりました。最初に乗ったときから、どう進化していったかを見るのは本当にすごいことです。」
— Vali Höll
ラボと実走のテストを続ける間も、選手たちは試作BoXXerを地元のコースやワールドカップで走らせていました。正式発表前にVali Höllは5勝を挙げ、2022年レジェ世界選手権も制覇。Loris Vergierはワールドカップで2勝し、同じ世界選手権で僅差の3位に入りました。
完成までには時間がかかります。ときには、進んでいる方向が違うという声を受け止めることが、正しい道へつながります。
「失敗したからこそ、多くのことを変え、多くのことを理解できました。最初からうまくできていたら、そこまで分からなかったはずです。」
— Jon Cancellier
BoXXerの取り付けには、公式サービスページにあるBoXXer User Manualを使用してください。
写真:Andy Vathis
文:Sarah Walter

