BIWA100ウルトラウォーク 23時間43分の旅
みなさんは「BIWA100ウルトラウォーク」というイベントを聞いたことがあるでしょうか。
滋賀県の長浜から大津まで、琵琶湖沿いを100km歩くイベントです。
そしてそれは恐ろしく長いイベントで、これから書く内容も恐ろしく長くなりますが、時間や距離の感覚が少し変わるかもしれませんので、よければ読み進めてください。

すべては6月のお酒の席から
「10月末に100km歩くイベントがあるんだけど」
とお世話になっている方に誘われたのは6月のお酒の席。
酔っている上に、まだまだ先の話だと思いながら、軽い気持ちでエントリー。
その後、周りの人から「ようやるなあ」と言われる。
軽く考えていたけど、確かにやばそう。
だいたい徒歩だと時速4〜5km。
平均時速4kmだと24時間歩いても足りない計算。
改めて、なんてものにエントリーしてしまったんだ・・・と思いつつ、そのまま忘却の彼方へ。
気づけば10月になり、イベントが迫ってきている。
何の練習もしていない。
そしてBESPOKED出展から海外来客対応まで、目まぐるしい一週間が過ぎ去っての週末。
結局、何も用意できていないまま、とりあえずKNOGのヘッドランプだけは充電。
あとはモバイルバッテリーを持って出発。

長浜スタート。CP1(13km)の彦根城を目指す。まだまだ元気。
朝から電車で長浜へ。
初参加の友人と合流して受付を済ます。
ゼッケンは924。

いつも語呂合わせでゼッケンを覚えるようにしている。
924 → 苦痛よ……。
嫌な響きの番号だ。
しかも、にわか雨まで降ってきた。やめて!
開会式が済み、スタートする頃には雨も上がってきた。
ウェーブスタート方式で、最終ウェーブの10時12分にスタート。
太陽も出てきて最高に気持ち良い。
長浜を出発すると、すぐに琵琶湖沿いの道に。



いいペースでスタスタ歩く。
最初のチェックポイントは13km地点、彦根城の横の護国神社。

12時半頃に到着したので、時速6kmに近いペース?
なかなか順調。
もらった焼きそばパンを食べて次へ向かう。
CP2(28km)近江八幡。足に少し違和感。
ここで一緒に歩いていた友人のペースが速く、ちょっと置いていかれそうに。
でも何とかついていきながら進む。

人気写真スポットの「あのベンチ」など、琵琶湖まわりの見どころをきっちり押さえてくれているコース。

チェックポイント2は28km地点、近江八幡。
このあたりで少し足に違和感が出始める。
座って立つと、足がちょっと痛い。
でも長浜からすでに近江八幡まで帰ってきたという感覚。
チェックポイント3は32km地点のファミリーマート。
ずいぶん細かく刻んでくるけど、こういうところでちゃんと補給してね、という優しさと受け止める。
このあたりから日が沈んでくるので、ヘッドランプを使い始める。
CP4(42km)近江牛丼が美味しい。帰りたい。
次のチェックポイントは42km地点、近江八幡駅。
短いコースを選択した人はここで終了。
18時頃に到着。
近江牛丼を食べる。たねやの饅頭付き。

美味しい。
帰りたい。
ここで足がいよいよ痛くなってきた。
太ももの裏がパンパンに。
参加賞に入っていたコリに効くというシートを貼ってみる。

ウォークは50kmを超えてから無言になるという前情報。
50kmを超えるまでは友人と同行しようと思っていたけど、これは無理と判断。
先に行ってもらう。
次のチェックポイントは60km地点、守山の琵琶湖沿いの公園。
想像してみて怖くなる
そして想像する。(暗闇でたくさん考える)

半分手前の42km地点ですでにかなり辛い。
おそらく次の60km地点に着いたとき、残り40kmを改めて想像することになる。
今ここまで歩いてきたしんどさを、もう一回そこから繰り返すことになるのだ。
怖い。
しかも20kmという距離は、徒歩だと時速5kmで歩いても4時間かかるのだ!
そしてそして、60kmはどんなに休みなく急いでもあと12時間はかかるのだ・・・
とにかく前向きになれるポイントを切り取りながら考えるけど、何にせよハードな現実しか突きつけられない。
行くしかない。
でも、いろいろテクノロジーで、地図とか、仲間達の現在地情報とか充実しているのでそれは本当にありがたい。ナビしたら車で9分とか出てくるのが嫌になる。


近江八幡駅前では、これから飲みに行くであろう人たちから声をかけられる。
「どこからどこまで行くんですか?」
「長浜から大津まで」
「えっ?」
みたいなリアクション。
できたら今すぐにでもやめて、あなたと一緒に飲みに行きたい。
夜の琵琶湖。コンビニがオアシスに。
かなり足に来ていて、再出発するとなかなかの痛み。
しばらく歩くと、筋肉がほぐれるのか、痛みが少し引いていく。
人気の少ない道を歩きながら、ペースも上がらず、後ろからひたすら抜かれる。
休むとまた痛くなるので、休憩したくない。

でも今度は眠気が襲ってくる。
ローソンがオアシスのように夜道に現れる。
コーヒーを飲む。
また歩き始めるけど、前よりさらに痛くなっている。
休憩した方が辛いってどういうこと?

何とか60km地点のチェックポイントに到着。琵琶湖大橋手前の公園。
ストーブの前で5分の仮眠を取って目覚めてLINEチェックしたら先に行っていた友人が寒さでスタートができないとメッセージが。
さっきまで仮眠を取っていた真後ろに彼もいたのだ。
お互い気づかないくらい疲れている。
こちらも余裕がなく、先に行かせてもらう。
時間の感覚がどんどん変わっていく
この後は琵琶湖大橋を渡って往復するコースが待っている。
まじで、その往復いらんやろ!
と思っていたけど、実際に歩いてみると少し印象が変わった。

すれ違うときに「お疲れ様です」と声をかけ合う。
一度離れた人と再会できたりもする。友人も何とかスタートを切ったようで、途中で挨拶。
ずっと一人で歩いていると、こういうちょっとした交流が嬉しい。
意外に大事なポイントな気がした。
でも、この後はひたすら8kmくらいの直線。
約2時間、映画一本観れるくらいだな。
座学で3時間?
徒歩で15kmしか進めない。
14時間の飛行機が辛い?
座れて映画も観れて、飲み物まででてきて、そんな幸せなことはないよ、と言ってやりたい。
と、過去の時間について考えたことがいろいろ勝手に思い出されて、捉え方がどんどん修正されていく。
普段、車や自転車で何気なく移動している距離。
それが自分の足だけになると、とんでもなく長い。
わかりやすいところでいくと、よく交差点にある300m手前の標識。
あの300m車だと一瞬だけど、歩くとまあまああることに気づく。
時間も距離も、移動手段が変わるだけでまったく違うものになる。
CP6(71km)守山。ようやく残り30km。
何とか次の71km地点のCP6にたどり着く。
トマトジュースを配っていたのは知り合いの方だったので嬉しくなる。
「あと30kmで終わりだよ!」
と励ましてもらう。
確かに50kmを超えると、距離の考え方がカウントダウンに切り替わって少し気持ちが楽に。
10kmを2時間で頑張れば、それをあと3回で終われる。(ちょっと前向きに)

でも、いよいよ足が激痛に。
テーピングが欲しいけど、薬局も開いていない。

ここでCP6までたどり着いた友人が、寒さに加えて足首の捻挫でリタイアしたとの知らせ⋯。
こちらもリタイアが頭をよぎる。
ガムテープで足首を固定するという暴挙
コンビニでガムテープを買って巻くことを思いつく。
一旦チャッピー(ChatGPT)に聞いてみたけど、全力で止めてくる。
なんならリタイアまで勧めてくる。
まあ、そりゃそうでしょうね。
でも、ここまで来てやめるのか。
また来年?
それはしたくない。
ということで、ガムテープを買う。
靴を脱いで気づいたけど、足の裏や横にもかなり水ぶくれができていそう。
潰さないように気をつけながら、靴下の上からガムテープで足首を固定。

すると、少し痛みが和らいだ感じ。
いい感じ。いける。
もちろん、おすすめできる方法ではないけど、このときはこれで何とか歩き続けることができた。
81km地点、草津のCP7。
仮眠をとって、追いガムテープで最終20kmに気合を入れる
次は南郷洗堰。
いよいよ最終チェックポイント、90km地点のCP8となる。
これさえ越えたら、あとはゴール。
朝日が昇る。長い夜が終わった。
洗堰を目指す途中で朝日が昇ってきた。
瀬田川が美しい。

ボートの練習をする学生さんたちの姿も輝いている。
こちらは足を引きずりながら歩いているけど、周りではいつもの朝が始まっている。

太陽が昇ってきたので少し休憩。
10分の仮眠をとって、また歩く。
何とか最終チェックポイントに。

最終チェックポイントでは休憩せず、あとはまっすぐゴールを目指す。

ラスト10km。
足もまた痛みが増してきた。
歩いては休んで、また歩く。
でも、残り10kmを切ったカウントダウンは今までになく嬉しい。
9km、8km、7km。
でも進みがどんどん遅くなる。

最後が長い。実はコースもちょい長だった。
ゴールが近づいて、コースの詳細を改めて見て気づく。
101.5kmと書いてある。
100kmじゃないのか。
車や自転車なら誤差の範囲だが、1.5km。
今の自分だと20分くらいさらに延長された気分でショック!
でも、もう見慣れた琵琶湖ほとりの景色になってきた。
帰ってきた感は相当出てきた。
ここで足をグネってDNF(途中棄権)とならないよう、一歩を大事に進んでいく。
100km地点通過(100km歩いてまだ終わってなくて複雑な気持ち)

そして、ついにゴール。

23時間43分。
長かった。最終の10kmは3時間弱かけて歩いてしまったことに。
本当に長かった。
「また来年も来てくださいね!」
と声をかけていただくが、即答できなかった。
振り返り。100km歩いて、何が変わったのか
きつさというのは相対的なものだと思っています。
自分の中の「一番きつかった経験」は、次にもっときついことを経験すると更新される。
そうすると、以前の苦労も「あの時よりは楽だった」と思えるようになる。
だから、できる限り新しいことにはチャレンジするようにしています。
ただ、今回の100kmウォークは正直ちょっと過剰摂取でした。


それでも、歩き終えて改めて感じたことがあります。
私は乗り物が好きですが、歩くのも好きです。
そして結局、移動することそのものが好きなのだと気づきました。
でも、移動することで、何が好きなのかと考えると、街の雰囲気だったり、人との触れ合いだったり、その土地の食べ物だったり。
目的地に着くことだけではなく、移動する過程で出会うものが好きなのだと。
徒歩、車、そして自転車
車、自転車、徒歩。
身近な、自分で移動できる手段を並べてみます。
車は遠くまで行けるけど、移動の間にある街の空気を感じ取るのは難しい。
徒歩は一番濃厚にそのエリアを感じ取れるけど、時間と体への負担が大きい。
今回、徒歩で行動範囲を大きく広げるという経験ができたことには達成感もあります。
ウォークには、きっと私がまだ知らないもっと深い世界があるのだと思います。
ただ、次に同じくらいの負荷をかけてチャレンジするなら、自分は自転車でもっと遠くへ、もっと広い世界を見に行きたい。

徒歩ほど濃厚でなくてもいい。
もう少し薄く広く、たくさんの街を訪れて、いろいろなものを見て、感じる。
そんな移動の仕方が、自分には合っている気がしました。
自転車がやっぱり好きだ!
長い時間歩いている間、ビワイチを楽しむサイクリストを何度も見かけました。
そのたびに「やっぱり自転車がいいなあ」と思いすぎたのかも。
でも、改めて思うのは
自転車は、移動できる距離と、街の空気を感じられるスピードのバランスが本当に素晴らしい乗り物ということ。

車では通り過ぎてしまう風景にも、自転車なら気軽に立ち止まれる。
徒歩ではなかなか行けない場所にも、自転車なら自分の力で行ける。
速すぎず、遅すぎず。
100km歩いたことで、そんな自転車の魅力を改めて感じることができました。
しばらくは、自転車で移動できるありがたさを、いつも以上に感じられそうです。
100km歩いたら、ますます自転車が好きになりましたというお話でした。
P.S もし参加される方がいたらKNOGのヘッドランプ良かったのでオススメです。

