10月23日-25日にかけて、大阪市港区の赤レンガ倉庫「GLION MUSEUM(ジーライオン ミュージアム)」において、ハンドメイド自転車の国際的な祭典「Bespoked Osaka 2026」が開催されました。

イギリスやドイツなどで開催されてきた本イベントのアジア初上陸となり、会場には国内外から70を超える独立系フレームビルダーやブランドが集結しました。
その中で、アメリカのチタンバイクブランド「MOOTS(ムーツ)」が出展し、
BESPOKEDアワードにおいて「COUNTY LINE」がロードバイク部門2位を獲得しました。

MOOTSの歴史とチタン加工技術
MOOTSは1981年、アメリカ・コロラド州スチームボートスプリングスで創業したブランドです。
40年以上にわたり、一貫してハンドメイドのチタンフレームを自社工房で製造し続けています。

チタンは軽量かつ高強度で、高い耐食性としなやかな乗り味を備える一方で、切削や溶接の難易度が極めて高い金属素材として知られています。
MOOTSの製造工程では、パイプ同士を接合するための「ざぐり」において極めて高い精度を追求しています。

接合前の仮組み段階で、髪の毛一本すら通さないレベルまで正確に各パイプをカット・研磨し、隙間なく密着させてから溶接を行っています。
接合面のチリを完全に合わせる工程を経ることで、異なるパイプ同士が強固に一体化します。
また、接合部に施される溶接ビードの仕上がりも非常に均一かつ平滑であり、長年の経験に裏打ちされた高度な溶接技術が反映されています。

展示された「COUNTY LINE」と「ROUTT」の詳細
ブースでは、発表されたばかりのロードモデル「COUNTY LINE」と、ブランドを代表するグラベルバイク「ROUTT」の2台を展示。


両モデルともにチタン特有の質感を活かした構成ですが、今回の展示で特に注目を集めたのがコックピット周りの設計です。
金属フレームでは難しいとされるケーブル類の完全内装化を、細身のチタンステムを採用しながら実現。外観からシフトケーブルやブレーキホースを完全に隠すことで、すっきりとしたシルエットを形成しています。

会場では完成車だけでなく、溶接前のステム単体も展示されました。
分割されたチタンパーツを組み合わせた際の精度の高さや、内部に設けられたワイヤールーティング用の構造を直接視認できる展示構成となっていました。


自社設計によるオリジナルカーボンフォーク
MOOTSの開発体制は、金属フレームの加工にとどまりません。
今回の出展車両に採用されたカーボンフォークは、汎用品ではなくMOOTSが独自に設計・開発した完全オリジナル品です。

ケーブルのフルインターナル化に合わせて、フォーク内部にはブレーキホースが無理なく通るクリアランスが正確に確保されています。
フレームのパイプ加工や曲げ加工だけでなく、コックピットパーツや専用カーボンフォークに至るまで、バイク全体を統合されたシステムとして自社で設計・製造しています。


精密な工作精度と最新の内装規格への対応、そしてフォークを含めた総合的な開発力が評価された結果が、今回のアワード2位選出につながっています。
White Industries / Brunnとの共同開発チタンクランク
今回の展示で、実物の登場を心待ちにしていたファンも多かったパーツが、カリフォルニアの高品質コンポーネントブランド「White Industries(ホワイトインダストリーズ)」とチタン成形のスペシャリストである 「Brunk Industries(ブランク・インダストリーズ)」、MOOTSの3社が共同で開発したチタンクランクセットです。

このクランクは、MOOTSのチタンアーム成形・溶接技術と、White Industriesの誇る高精度な切削技術が融合して誕生しました。ロードからグラベル、MTBまで幅広いジャンルとギア比構成に対応しています。

チタン製3Dプリントエンド/ヨーク
フレーム側における近年の象徴的な進化として、リアエンド/ヨークの製造にチタン3Dプリンティングを採用している点も見逃せません。
3Dプリント製ドロップアウトは、高い強度と剛性を維持しながら大幅な軽量化を達成しています。
フラットマウント台座の歪みを極限まで抑えてブレーキアライメントの精度を高めるとともに、内装ブレーキホースの導線を最適化する内部トンネルを設けるなど、現代のディスクブレーキロード・グラベルバイクに求められる構造的要件をクリアしています。


伝統的なハンドクラフトの美学と、最先端技術の融合。
今回の「BESPOKED OSAKA 2026」におけるMOOTSのブースは、まさにその到達点を余すところなく伝えられるとなりました。
職人技を核に据えながらも、チタン3Dプリンティング技術の導入、完全内装化を前提としたオリジナルフォークやステムの統合開発、そして異業種・異ブランドとの協業によるコンポーネント開発に至るまで、彼らの視線は常に自転車工学の最前線に向けられています。
「COUNTY LINE」が手にしたロードバイク部門2位という栄誉は、単なる懐古的な金属フレームへの賛美ではありません。
金属素材の可能性を信じ、40年以上の歴史を積み重ねながらもなお革新を止めないMOOTSのクラフトマンシップが、現代の最高峰として世界に認められた証しと言えるでしょう。





