Charger Race Day 2 | シャーシ | DebonAir+ | ライドフィールの検証

2024 SIDファミリーの開発が始まったとき、XCフロントサスペンションチームには大きな目標がありました。OpenとLockの間に、効率を高めるPedalポジションを加えることです。RockShoxにとって初めての考え方ではありませんが、既存のCharger Race Dayダンパーを大きく作り直す必要がありました。

同時に、SID SLはトップレベルのワールドカップレースに集中し、SIDは独自の性格を持たせる方針もありました。SIDには、容量を増やして調整幅を広げたエアスプリングと、大幅なシャーシ更新を採用します。

開発の中心はSkyler TeachoutとBronson Stagner。Charger Race Day 2、SID用DebonAir+、シャーシの細部まで共同で設計しました。お互いの知識を持ち寄り、XCサスペンションの既成概念を超えるように刺激し合った成果です。

SIDとSID SL、その違い。

SIDは「Superlight Integrated Design」、SLは「Super Light」の略。軽量なXC用途というルーツを共有しながら、それぞれに違う役割があります。

2024 SID SL:32mmアッパーチューブ、100mm/110mmトラベル、3P/2P仕様。軽さと効率を徹底して追求します。

2024 SID:35mmアッパーチューブ、110mm/120mmトラベル、3P/2P仕様。容量と調整幅を増したDebonAir+を採用し、軽さを保ちながら、荒れた路面ではより余裕のある乗り味を目指します。違いはトラベル量の10mmだけではありません。

Charger Race Day 2

ワールドカップXCC/XCOで、プロダクトマネージャーのJed Douglasは、中程度の障害物を登る選手をスローモーションで撮影しました。ロックしている選手は岩ではじかれやすく、Openの選手は衝撃を吸収できる一方で効率が下がる。その間にあるPedalでは、凹凸を吸収しながら、余計な上下動を抑えて踏み続けられることが確認できました。

3つ目の減衰ポジションを加えるには、新しいコンプレッションバルブが必要でした。相互に干渉しない3つのオイル流路を設け、それぞれのポジションを明確にしています。

Open:バルブを通るオイルをできるだけ多く流します。
Pedal:流れを少し絞り、圧力と減衰を増やします。
Lock:予期しないドロップなどでブローオフが働く場合を除き、流れを止めます。

8mmの細いロッドと強いロック力を持つCharger Race Dayダンパーでは、特にブローオフ時に最大2000PSIの圧力が生じることがあります。この高圧へ対応するため、シールヘッドを再設計し、低摩擦を保ちながら耐久性を高めるSKFシールを採用しました。

検証では81本のサンプルフォークを使い、ロックしたダンパーへ85インチ/秒の速度で衝撃を加え、フラットへ着地する負荷を再現しました。グラフは、50,000回を超えるテスト後も、ロックアウト性能を保っていることを示します。

これらの改善はUltimateやSelect+だけのものではありません。軽量な切削加工のCharger Race Day 2から、ベースモデルのRush XCまで、ラインアップ全体で同じ減衰品質を目指しています。

「Ultimateでもベースモデルでも、SIDで得られる体験を同じにしたい。違いは性能ではなく、重量です。」
— Bronson Stagner

シャーシ

Ultimateのクラウンは、不要な材料を切削してさらに軽量化。開発記事では70gの軽量化を紹介しています。見た目の変化に加え、35mmのSIDでは外から分かりにくい部分も更新しました。

まずアッパーチューブを延長しました。従来はXC用途の小型エアスプリング・ダンパーに合わせ、重量を抑えるため短いチューブを使っていました。新しい大容量DebonAir+を収めるため、スプリング側を延長し、ダンパー側もそれに合わせています。

長いチューブは伸び切った状態でも下側ブッシュまで十分にかみ合います。ストローク中のこじれを抑え、ブッシュとの適切なすき間を保つことで摩擦を減らします。ブッシュの重なり量も増やし、横方向の負荷を低減しました。摩擦についての本国解説

ブッシュは工場で取り付けたあと、サイズを仕上げます。開発チームは5種類のブッシュ寸法仕様と、アッパーチューブ長の異なる3種類のシャーシを比較し、適切な組み合わせを探しました。

潤滑油が滑らかな油膜を作れるすき間を確保しながら、何度も走ったあともガタが出ない精度が必要です。27本を超えるサンプルを使い、750時間の模擬走行で検証しました。

これは、体重約200lbのRockShoxチームリーダーDan Albertが、XCフォークでエンデューロコースを約10,000回下るような条件に相当します。ショートトラベルでも、厳しい使い方を前提に設計しています。

DebonAir+

新しいDebonAir+はSIDに採用され、SID SLには搭載されません。レース志向を深めるSID SLに対し、SIDは本格的なXCとトレイルの境界へ、軽さと積極的な走りを両立する性格を持たせています。

従来のスプリングは、高いライドハイトで効率を保ち、中間域は柔らかく、終盤は大きく立ち上がってボトムアウトを抑える設計でした。空気圧を変えても、その基本的な性格は大きく変わりません。今回は、空気圧やセッティングによって、好みやトレイルに応じた性格へ近づけることを目指しました。

3つの開発目標

1.動き始めを柔らかく。
最初の圧縮に必要な力を減らし、小さな入力へ敏感に反応すること。

2.中間域の支えを増やす。
路面を越える途中でも、深く沈みすぎず、ライダーを支えられること。

3.フルトラベルを使いやすく。
終盤の立ち上がりを過度に強くしないこと。より強い抵抗を好む場合はBottomless Tokensで調整できます。

最初の一歩は、エアスプリングを大きくすることでした。スプリング側ロワーレッグの底部を下げ、全体の容量を16%拡大。ネガティブチャンバーは50%増、ポジティブチャンバーは16%増とし、動き始め、中間の支持力、フルトラベルへの到達を改善しました。エアチャンバーの基本はDebonAir+解説へ

動き始めをさらに滑らかにするため、ゴム製トップアウトバンパーをコイルスプリングへ変更しました。ゴムは変形と復元の応答に遅れが生じやすく、細かな凹凸が連続すると伸び切り付近で厳しさにつながることがあります。コイルは速度の影響を受けにくく、素早く反応するため、トップ付近での突き上げを抑え、トラクションを高めます。

結果として、初期は柔らかく、中間は高い位置で支え、終盤はプログレッシブさを残しながらフルトラベルを使いやすいカーブになりました。

本国の開発記事では、数PSIの微調整だけでなく、10PSI程度の違いで性格の変化を試す考え方も紹介しています。圧を上げれば高い位置で支え、終盤の抵抗を増やす方向へ。大きく下げれば、よりしなやかで、長いトラベルのような余裕ある感触へ。柔らかさと効率を両立したい場合は、Pedal/Lockも活用できます。実際の設定は、お使いのフォークの指定範囲内で行ってください。

「空気圧を下げると、スプリング全体のフィーリングが変わり、より深い位置を使えます。空気圧を上げれば、厳しさを増やさずに高い位置で走れます。」
— Bronson Stagner

走りで確かめた性能

3P/2Pダンパー、シャーシ、DebonAir+だけでなく、細部の調整、試作、試行錯誤を積み重ね、長期的な性能、耐久性、ライドフィールを磨きました。

2024 SID/SID SLは一般発売前に、XCO・XCCワールドカップで7勝を超える勝利、2位・3位を合わせて12回獲得しました。

「SIDは、より滑らかに、同時により軽くなりました。下りと登りの両方がよくなった。ライダーが望むことですが、両立するのは簡単ではありません。」
— Luca Schwarzbauer(Canyon CLLCTV XC)

2024年のSID/SID SLはUltimate、Select+、Select、ベースモデルの4グレードで、3Pまたは2Pを用意しています。更新情報や適合の詳細はFAQをご確認ください。

SIDを詳しく見る SID SLを詳しく見る SIDの歴史 SID/SID SL公式FAQ

写真:Callum Wood、Anthony Smith
文:Sarah Walter