【ABUS訪問記2】社員も走る。ABUSの開発を支える環境

前回は、ABUS本社のあるルール地方の都市・ドルトムントの様子をお伝えしました。

今年は創業102年目、ABUS本社の今

翌朝はいよいよABUS本社へ訪問。

今回訪問したのは、ABUSのインターナショナルセールスミーティング。

会場となった施設にはミュージアムも併設されており、ABUSというブランドが歩んできた歴史や価値観に触れられる空間になっていました。
ABUSの正式名称は、August Bremicker und Söhne
創業者オーガスト・ブレミッカーと息子たちによって、Volmarsteinの小さな村で南京錠づくりからスタート。今もブレミッカー一族によってABUSは続いていて、2026年現在、創業102年目を迎えています。

受付の背面には巨大なABUSロゴ。
よく見ると、小さな南京錠で構成されています。

実は長いヘルメットの歴史

床には創業から現在までの年表もあり、ドイツ国内から世界へと広がっていった“安心と安全”の歴史を感じることができます。
ABUSといえば鍵のイメージが強いブランドですが、2016年以降はMOVISTAR TEAMと共同でプロロード向けヘルメット開発に本格参入し、GAMECHANGERの登場によってロードレース分野でも存在感を高めていきました。

近年ロードで知名度を高めたという印象がありますが、実はヘルメット事業自体は1994年から続いています。
ちなみにこのモデルになっている子供もブレミッカーさんで、今は自転車関連部門のトップ。

ドイツで開発、イタリアで製造

ABUS社内の別棟には、ヘルメットのテストラボも併設。
ここではヨーロッパの規格EN1078(自転車用)、EN1384(乗馬用)、アメリカの規格CPSCなど各国の強度テストを再現できるようになっています。
開発時にこのラボでテストして、実際の生産時にはイタリアの工場で再び行うよう。
テストラボはブラックボックスと呼ばれ、中は撮影禁止になっています。

環境を整えていく企業としての強み

今回訪問して特に感じたのは、ABUSは「その分野でやる」と決めた時に、本気でその文化ごと会社に取り込んでいくことです。

ショールームには、サポートチームのジャージやヘルメットが並び、社内にはサイクリングチームも存在。

専用ウェアまで作られていて、社員だけでなく我々のような外部の人間も購入できます。

プロと開発はもちろん、開発サイドもしっかり乗る

さらに、新製品の開発時には社員自らがテストライドを実施。
ロードのロングライド、グラベル向けのヘルメット、TAIPANのリリース時にはなんと500kmの耐久チャレンジ。
12人でスタートして5人が完走したよう

プロアスリートとの協力体制

プロチームは、今年PINARELLO Q36.5のチームが加わり、ALPECIN、MOVISTARと含めて3チームに。
プロチームへのヘルメット供給数という意味でも、ABUSの存在感は大きくなっています。

サポートを行うことでABUSの名前を広げることももちろんですが、開発にとって有益なフィードバックが得られることは間違いありません。
そして、あらゆるジャンルの超一流の人たちが多ければ多いほど、その情報もたくさん集まりいいものづくりに反映されます。

多くのサポートライダーも会社を訪れ、社員との距離も近い環境です。
今回のミーティングでも、

ゴジェック兄弟(機関車の上を飛んでいくライドで有名なポーランドのMTBライダー)

など、多くのライダーが参加していました。
さらに印象的だったのが、施設内に置かれていた“パリ〜ルーベの石畳”。

サイクリングが浸透する社内

単なる展示ではなく、「自分たちはこのカルチャーの中にいる」という空気を会社全体から感じます。
そしてABUSでは、セールスミーティング期間中でも必ずライド時間があります。

ロード、グラベル、MTBに分かれ、食前に全員でライドへ。
さっきのプロライダー達も一緒に参加することも。

雨でも普通に出発。
特に印象的なのは、各部署のトップや経営陣も毎回ライドに参加していることです。

ロード班はかなり本気でした。

自分はMTB班に参加しましたが、こちらもかなりしっかり走るメンバーばかり。
途中でテンションが上がり、止められても次のトレイルへ向かってしまうメンバーまでいる始末。
(ちゃんと後でご飯に遅れないように合流していた)

乗る⇔開発のサイクルが高回転

そのMTBライドには、ヘルメットのプロダクトマネージャーであるLucasも。
新作のMTBヘルメットのテストも兼ねているのでしょうか。

プロライダーからフィードバックを受け、自分たちでも実際に乗ってテストする。
さらに会社としてライド文化自体を推奨している。

だからこそ、
「現場で感じたものが、そのまま製品開発に戻っていく」
そして、乗る人と作り人の距離が近いからこそ改善サイクルが非常に速くなっています。

これは単に“規模が大きい会社”という話ではなく、

・社員が乗る
・開発者も乗る
・プロも関わる
・会社がその環境を支える

という循環が企業文化として成立していることが強みなのだと思います。

鍵メーカーというイメージだけでは見えない、ABUSのもう一つの底力を感じた訪問でした。
次回は、Lucasへのインタビューをもう少し深掘りしてみたいと思います。