オーリンズが「良い」と言われる理由―― 一般的なサスペンションとの違いと、TTXテクノロジー

1976年にスウェーデンで創業したオーリンズは、モトクロス、ロードレース、F1、MotoGP といった最高峰のレースカテゴリーで実績を積み重ねてきたサスペンションブランドです。

そうして培われたダンパー技術を、自転車用として本格的に落とし込まれ、
皆が絶賛する最高のサスペンションとなりました。

では、なぜオーリンズが「良い」と評価されるのか。
それは、オーリンズ独自のダンパー機構「TTXテクノロジー」にあります。

ここではTTXテクノロジーついて、
・一般的なサスペンションとの構造的な違い
・リバウンドなど細かい減衰調整ができるメリット
・ライダーの好みに合わせてしっかり詰められるという価値

という 3 つの観点から解説します。


一般的なサスペンションとオーリンズの”ダンパー”の違い

ダンパーの構造について

サスペンションだけでなく、車のバックドアのヒンジや、扉の蝶番にも使用されているダンパー。
まずは、ダンパーの構造と、その種類について解説します。

ダンパーは、シリンダーの中にオイルが入っており、その中をピストン(棒)が行き来することで、ピストンヘッドをオイルが通過する時の抵抗により、減衰力を発生させる構造です。

まず、ダンパーには大きく「シングルチューブ」(単筒式)と、「ツインチューブ」(複筒式)という2つの種類があります。

○一般的なサスペンション

多くのサスペンションダンパーは「シングルチューブ」単筒式)というダンパーを採用しています。
シングルチューブのダンパーは、
・1 本のシリンダー内をピストンが上下する
・ピストンヘッドに開けられた穴やシムスタック(薄い板バルブ)をオイルが通過することで減衰力を発生させる

という、比較的シンプルな構造を採用しています。

パーツ点数も少なくシンプルな構造で軽量な一方、強い入力や長時間の連続使用では、オイルの流れや圧力が一時的に不安定になりやすく、
急激な入力で「ガツン」とした抵抗が出る(挙動の遅れ)が発生したり、
長い下りでオイル温度が上がると、熱が発生してオイルが柔らかくなり、フィーリングが変化しやすくなる場合があります。

○オーリンズの TTX テクノロジー

オーリンズはTTX テクノロジー(Twin Tube + X)という独自のダンパーを採用しています。
ツインチューブのジャンルに入りますが、細かい部分で独自の機構が採用されています。

TTXは、シングルチューブとツインチューブの両方のメリットを掛け合わせた「ハイブリッド」。
ピストンが押し込まれると、外側のシリンダーにオイルが移動します。(ここはツインチューブと同じ)

ツインチューブと異なるのは、内側と外側のシリンダーがつながっているところです。

衝撃でサスペンションが縮むときは、オイルが内側から外側へ逃げる
伸びるときは、その逆方向にオイルが戻る

といった形で、常にオイルがダンパー内部を循環するようになっています。

さらにツインチューブ構造により、ダンパー内のオイルは伸び側・縮み側の両行程で常にプラス側の圧力で働くよう制御されており、キャビテーション(オイルが泡立ち減衰が不安定になる現象)のリスクを抑えた設計となっています。

この結果、

  • 伸び側・縮み側の切り替え時もオイルの動きが乱れにくい
  • 減衰の「効き始め」に引っかかりが少なく、初期の動きが非常にスムーズ

という特性が得られ、オーリンズの代名詞ともいえる「ワンランク上の接地感」を生み出しています。


TTX がもたらすフィーリング:一般的なサスとの乗り味の差

TTX テクノロジーを搭載したサスペンションで走り出すと、連続する岩場や木の根、荒れたコーナー進入などで、ラインを狙い通りにトレースしやすいことが大きな特徴として挙げられます。

具体的には、次のような走りのメリットにつながります。

■細かいギャップに対する追従性

初期の動きがなめらかで、細かい凹凸を「いなす」ように吸収するため、タイヤが路面から離れにくく、グリップを維持しやすくなります。

■ブレーキング時の安定性

荒れた路面でブレーキをかけてもサスペンションの動きが乱れにくく、狙ったライン上で確実に減速しやすくなります。

■長いダウンヒルでの一貫したフィーリング

オイルが循環しながら使われることで局所的な熱ダレを抑え、一本目と同じ感覚で最後まで走り切りやすくなります。

「速く走っているのにバイクが落ち着いている」「荒れたセクションでラインがぶれにくい」
といったライダーの感覚は、こうした構造上の違いによるものです。


まとめ:オーリンズが「良い」と言われる理由

オーリンズのサスペンションが多くのライダーから「良い」と評価される背景には、次のようなポイントがあります。

  1. 一般的なサスペンションとは異なる TTX 構造
    二重管内をオイルが循環することでキャビテーションを抑えつつ、伸び縮みの切り替わりもスムーズにし、「ワンランク上の接地感」を実現している。
  2. リバウンドなど細かい減衰調整が可能
    伸び側・縮み側で独立したオイル通路と調整機構により、ライダーの狙いに応じたセッティングが行いやすく、互いの特性に干渉しにくい。
  3. ライダーの好みに合わせてしっかり調整できる余地
    高い基本性能を持ちながら、コース・スタイル・体重に応じてセッティングを追い込むことで、「自分のためのサスペンション」に仕上げることができる。

連続する岩や木の根、荒れたコーナーの進入といった場面で、
「思い通りのラインをトレースできる」「ブレーキングでも安心して減速できる」という体験は、こうした技術的背景によって支えられています。

オーリンズが「良い」と言われるのは、単なるブランドイメージではなく、TTX テクノロジーをはじめとした構造とセッティングの両面から生まれる結果だと言えるでしょう。