先日のABUS訪問に続いて、FIDLOCKに訪問をする機会が得られました。
ボトルケージから、ボトルを上に引き抜く。
長い間、それがスポーツバイクの“当たり前”でした。

しかしドイツのFIDLOCKは、
「それ、本当に使いやすいのか?」
という疑問から、TWISTという全く新しいシステムを作り上げます。
開発の始まりは、正式プロジェクトですらなかったといいます。
今回は、FIDLOCK本社で聞いた
今年で誕生からちょうど10年の節目を迎えたTWIST誕生の裏側を紹介します。
実は、このシステムを開発をきっかけに、自転車部門「FIDLOCK BIKE」の設立。
世界中で愛されるツールとなりました。

ケージレスという革新的なアイデアで、スポーツバイクのボトル事情をガラリと変えたこのプロダクトですが、実は「最初は一般発売する予定が1ミリもなかった」ようです。
ではなぜ、この製品が生まれたのか、製品開発のストーリーを紹介します。
自転車好きの社員の「思いつき」からTWISTがスタート。
当時のFIDLOCKは、今ほどの規模ではなく、社員はわずか10〜15人ほど。
しかし、そのほとんどが熱狂的な自転車愛好家で、ほぼ全員が毎日自転車でオフィスに通勤するような環境でした。

カバンやヘルメット用のマグネット式バックル(部品)を製造するメーカーとしてスタートしていたFIDLOCKの社内で、ある日、自然発生的にこんなアイデアが浮かびます。

「うちのカタログには素晴らしいマグネット技術がある。これを使って、自転車用のボトルそのものを作れないだろうか? 自転車のフレームに、何らかの方法でボトルを一体化させるんだ」 —— 開発責任者・フリーデマン
当時は具体的な顧客もいなければ、製品化の計画はなく、
ただ、社内の自転車好きたちをワクワクさせる「クレイジーなアイデア」があっただけです。

彼らは通常業務の合間を縫って、他のプロジェクトがない「空き時間」を見つけては、この課題を解決するためのプロトタイプ作りに没頭し始めました。
ひねって外す「ツイスト構造」の発見
数多くの試作品を作る中で、現在のシステムにも残る重要な構造が見出されました。それが、中央の回転軸となるピンと、動く「C型リング」を組み合わせた独自の機構です。

従来のボトルケージは、ボトルを「上に引き抜く」のが当たり前でした。
しかし、フレームサイズが小さな自転車や、リアサスペンションが干渉するマウンテンバイクでは、ボトルを引き抜くスペースが足りないという致命的な課題がありました。

試行錯誤の末にたどり着いた「ボトルを横にひねる(ツイストする)だけで外せる」というアイデアは、まさにその課題を完璧に解決する、サイクリストにとってのブレイクスルーだったのです。



予期せぬ大反響と「FIDLOCK BIKE」ブランドの誕生
2016年のユーロバイクショーに持ち込まれたTWISTボトルですが、当時のFIDLOCKには、これを一般のサイクリストやショップ、卸売業者に向けて直接販売する計画はまったくありませんでした。
一般に売るためではなく、大手自転車メーカー(OEM)に「うちのマグネット技術を使えば、あなたのブランドでこんなボトルが作れますよ」と提案するための、ただのサンプルを展示していました。

しかし、ブースがオープンすると、彼らの予想を覆す事態が起こりました。
世界中から集まった自転車の小売店(ショップ)のバイヤーたちが、
「おい、このボトルは買えるのか? FIDLOCKって書いてあるぞ!」と聞いてきたのです。

フランスからの「1,000個の注文」が歴史を動かした
昔から付き合いのあったフランスのディストリビューターがブースにやってきて、
「これだ! 私はフィドロックのディストリビューターになりたい、このブランドのままこれが欲しいんだ」
と言ったそうです。

まだ納期も決まっておらず、一般販売用の価格すら計算していなかった開発チーム。
量産時の本来のベースカラー(ブラック)すら見せていない状態でしたが、熱意に押され、その場にあった数本のイエローのサンプルを手渡しました。
すると翌週、彼から興奮した様子で電話がかかってきて、
「すべて順調だ。ショップに見せたら大ウケしたよ。とりあえず、1,000個注文させてくれ!」
納期も価格も知らない、量産カラーすら見たことがないのに1,000個の注文。
これをきっかけに『FIDLOCK BIKE』というジャンルというか、新たなブランドが本格的に立ち上がりました。
10年間の進化、そしてサイクリングを超えた未来へ
当初はボトル1種類、カラーも限定的だったラインナップは、この10年間で爆発的な成長を遂げました。

初期には、溶着部分の耐久性をさらに高めるために金属製バンドを巻き付ける改良など、幾多のアップデートを重ねました。

開発チームの絶え間ない努力により、現在のTWISTシステムは完璧な信頼性を誇る製品へと進化しています。写真は落下テストでマウントから外れないかのチェック。

かつて、自転車を愛する数人の社員が「空き時間」に思い描いたクレイジーなアイデアをきっかけに、現在では世界中に愛される革命的なアイテムへと進化しました。
自転車好きの社員たちが、“空き時間”に始めたクレイジーなアイデア。

それは10年後、世界中のバイクに取り付けられるシステムへと成長しました。
しかし、FIDLOCKのおもしろさは、TWISTという製品そのものだけではありません。
なぜこの会社は、「瞬間確実」という感覚にここまで執着するのか。
次回は、ドイツ・ハノーファーのFIDLOCK本社で見えた、このブランド独自の開発思想に迫ります。
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