路面の凹凸に滑らかに追従しながら、狙ったラインをしっかり保つ。
Cane CreekのInvert Enduroは、この両立を目指して開発された倒立フォークです。

近年は各社から倒立フォークが登場し、MTBでも改めて注目を集めています。
では、Invert Enduroはほかの倒立フォークと何が違うのでしょうか。
チューブの太さ、保護ガードの形状、アクスルの固定方法には、それぞれ開発中に見つかった課題と、その解決策が反映されています。

今回は本国Cane Creekの公式記事を基に、なぜこの設計になったのかを紹介します。
チューブ径は、太ければよいわけではない
開発チームは2024年2月に他社製品や自社のHelm MKIIとの比較試乗を開始しました。
目標は、正立フォークの方向安定性と、倒立フォークの滑らかな追従性を両立すること。

そのために、まずフォーク全体の剛性を大きく左右するチューブ径を検討しました。
最初の試作は、上側のチューブが52mm、下側の摺動部が40mmという太い構成でした。
ところが落下試験では、フォーク本体よりも先に試験装置のヘッドセットベアリングが破損し、ステアラーチューブが曲がる例も発生。
フォークの剛性を高めるだけでは、衝撃への対応として十分ではないことが分かりました。

原因は、フォーク本体の剛性が高すぎて適度にしならず、衝撃荷重がヘッドセットやフレーム側に集中して伝わってしまうことでした。

そこで上側45mm/摺動部38mmへとチューブ径を見直し、フォーク本体に適度なしなりを持たせ、衝撃荷重がヘッド周辺に集中するのを抑える設計に変更しました。
操舵に必要な剛性と、衝撃を受け流す柔軟性のバランスから、この寸法に落ち着いています。
SideSwipe:傷が集中する側面を保護
倒立フォークは摺動部が下側にあるため、走行中の接触や転倒、運搬時の傷から守るガードが必要です。
ただし、前走車が跳ね上げる大量の土や石に備えるモトクロス用の形状を、そのままMTBに持ち込む必要があるのか。Cane Creekは、保護すべき場所を実車から調べ直しました。




70台以上を調査すると、傷は下部の正面より側面に集中していました。
そこでSideSwipeは側面の保護を重視し、正面に大きな開口部を設ける形状に。必要な範囲を守りながら、下部が大きく見えすぎない外観を目指しています。

ガードにはブレーキホースを保持する機能も持たせました。
フォークが縮む際にホースがスポークへ近づかないよう導き、専用の追加アームを使わずに済む構成です。固定には簡単で信頼性が高く、低コストな結束バンドを採用。紙模型や3Dプリントで形状とホースの動きを検証し、量産品は射出成形樹脂としました。
SquareLocでアクスル接合部の回転を抑える
左右の脚をつなぐ下部アーチがない倒立フォークでは、ねじれに対する剛性が操縦性を左右します。
一方で、適度なしなりは追従性にもつながります。実走でアクスルとドロップアウトの接合部が乗り味に大きく影響すると分かり、開発チームはこの部分に約1年をかけました。

同社の比較試験では、丸いアクスルはピンチボルトを規定どおり締めても、荷重によって接合部で回転する場合がありました。

そこで採用したのが、アクスルと受け側の平面同士をかみ合わせ、ピンチボルトで締結するSquareLocです。締め付けによる摩擦に加え、形状でも回転を抑える考え方です。
素材や中実・中空の構造も比較し、17-4予硬化ステンレスを選択しました。加工の難しさやコストは増すものの、試作・試乗で求める剛性と乗り味が得られたことを優先しています。

標準仕様を15mmとしたのは、必要な剛性を確保しつつ、より一般的なアクスル径を採用して導入のハードルを下げるためです。20mmはさらにねじり剛性を高め、体重のあるライダーや高速域での正確な操作を重視する場合の選択肢。径の違いで乗り味も選べますが、既存ホイールへの装着にはハブなどの対応確認が必要です。

実走で操縦性を検証
開発拠点周辺の米国南東部だけで良好な結果が出ても、異なる路面や斜度で同じように使えるとは限りません。そこで2025年秋にはベリンガムからスコーミッシュ、ウィスラーへとテストを拡大。

現地のライダーの意見も取り入れ、急斜面で強いブレーキングを続けた際のねじれや、狙ったラインを維持できるかを確かめました。
乗り味の評価はメーカーによるものです。
紹介したアイテム
あわせて読みたい記事


