Cervéloの3本柱となるフラッグシップモデルである新型Soloist、R5、S5の適性を理解するため、今回は同日、同一条件での比較テストを実施しました。
カタログスペックや風洞実験のデータだけでは見えてこない、リアルな走行フィーリングとジオメトリー表の奥にある事実を読み解きます。
比較テスト条件について
【テスト機材データ(共通セッティング)】
テストホイール: ENVE SES 4.5 pro
タイヤ / 空気圧: ENVE SES RACE DAY TIRE 29c チューブレス / フロント4.1bar、リア 4.2 bar
ヘルメット: GIRO Eclipse Pro(ライダー側の空気抵抗によるノイズを排除するために統一)
サドル: Fizik Arione R3 BB中心より6cm後退
ポジションパーツ: サドル、ハンドル幅(380/420mm)、ステム長(90mm)、クランク長(165mm)は、3台とも同一の製品・同一サイズに統一してテストを実施。
| NEW SOLOIST | S5 | R5 | |
| フレームサイズ | 51 | 51 | 51 |
| コンポーネント | Shimano Ultegra Di2 (R8100) 2×12s | SRAM RED E1 AXS(2×12s フロントダブル仕様) | SRAM RED E1 AXS(1×12s フロントシングル仕様) |
| ハンドル | HB18一体型ハンドル(ステム長:90mm / ハンドル幅:380/420mm) | HB19一体型ハンドル(ステム長:90mm / ハンドル幅:380/420mm) | HB18一体型ハンドル(ステム長:90mm / ハンドル幅:380/420mm) |
| 車重(ペダルなし) | 7.08kg | 7.15 kg | 6.05 kg |
NEW SOLOIST

S5

R5

ライダー情報
身長 / 体重: 168cm / 66 kg
サドル高: 691mm
バックボーン: 2013年モデルから現在に至るまで、14年間にわたり歴代Cervéloの試乗車の組み立てからテストライドまでを担当。現場の最前線で設計思想の変遷と各年代ごとのフレーム特性を検証し続けている。

1. 総評:前作のSOLOISTにあったチグハグ感が払拭された「1本の芯」と、410mmのタメ
新型Soloistに乗って真っ先に感じるのは、メーカー発表のジオメトリー数値以上にバイク全体の挙動が洗練されていることです。
前作で僅かに感じられた「ハンドル、ヘッド、フロントスルー、BB、リアスルーがそれぞれ微妙にズレる感覚」や、バイクを振った際に均一なしなりではなかったアンバランス感が綺麗に払拭されています。

新たに完成車に採用された一体型ハンドル(HB18)の恩恵も大きく、フロントからリアにかけてのまとまりが生まれ、フレーム全体にカチッと「1本の芯」が通ったような1歩目の加速の鋭さが増しています。
また、S5譲りのシートステー接合部デザインにより、前作にあったリア周りの独特の抵抗感もなくなり、素直に風が抜けていきます。


フロント側の高い固定力と剛性でチグハグ感を解消しつつ、剛性を過剰に引き上げるのではなく適度にいなすBB構造へとシフトさせる。
このフレーム剛性の協調と足回りの設計が統合されることで、過酷なレース環境から週末のロングライドまで、様々なシチュエーションで疲労を残さずに走れる足あたりの優しさを生み出しています。
2. エアロロード「S5」との比較:高速域の伸びと心地よいケイデンス
平坦での空力に特化したS5と比較すると、新型Soloistのペダリング特性がより明確になります。

- スプリントとパワー伝達
最大スプリントを想定して体重の10倍にあたる高いパワーを入力した際、S5はクランクが2時を過ぎたあたりから強い加速感があり、空力性能の高さとパワーロスの少なさから、踏み込んだ力が逃げず4時の位置でさらにスピードが乗るような高い推進力を持ちます。
対してSoloistは、3時の位置でしっかりとトルクが掛かる感覚があり、1歩目の初速に関してはS5と遜色ありません。 - 登坂とバイクの振り
斜度5%の登り坂において、自分の体重の3倍のワット数、時速22キロ付近を目安にしっかりとペダルを踏み込んだ際、SoloistはS5よりも振りが軽く感じます。
S5はよく進むもののハムストリングスへの負荷が大きく脚が負ける感覚が来やすいのに対し、Soloistは足あたりが優しく、登坂を繰り返しても疲労感が蓄積しにくい特性があります。 - 心地よく進むケイデンスの違い
ペダリングにおいて心地よく進む回転数にも違いがあります。
S5が毎分90回転から100回転の高回転で回す方が伸びるのに対し、Soloistは毎分80回転から90回転付近で最も素直な反応を示します。
S5と同じ感覚で毎分100回転を超えて回そうとするとフレームのしなりとのズレを感じやすく、あえてギアを1枚重たくし、毎分80回転から90回転でしっかり踏み込むことで、心肺を追い込まずにトルクで進ませることができます。

3. 軽量オールラウンダー「R5」との比較:登坂のキレとマイルドなタメ
CervéloのオールラウンドモデルであるR5と比較すると、SoloistはR5の遺伝子を持ちながら、よりマイルドにチューニングされた特性であることが分かります。

- 加速感と登坂性能
ゼロ発進から時速25キロまでの初動は、R5のような軽快感があります。
しかし、R5が持つ405mmの短いリアセンターが生み出す圧倒的な登坂のキレとレスポンスには及びません。
体感として、Soloistで斜度5%を維持できる自分の体重の3倍のパワー出力があれば、R5なら斜度7%の登りでも同じ出力を維持して駆け上がれる感覚があります。 - 心地よく進むケイデンスの比較
R5は毎分100回転で上まで心地よく回る特性を持っています。
一方、Soloistは410mmのリアセンターが生み出す駆動系の適度なタメとマイルドさを活かす設定となっており、回すよりも踏み込むペダリングにアジャストしやすい印象です。

4. 理想のポジションを作り出す、Soloistならではの最大の強み
近年、専用パーツによる完全内装化が進みポジション変更に高いハードルがある中で、新型Soloistには非常に強力かつ柔軟な解決策が用意されています。
専用一体型ハンドルであるHB18によるエアロなセットアップだけでなく、一般的な1-1/8インチコラムに対応したハンドルやステムを自由に選択できるインターフェースを備えている点です。

好みのブランドや使い慣れた丸形ハンドル、ミリ単位のステム調整など、仕様を幅広く選べるメリットは計り知れません。乗り手の体格や好みに合わせて最適なパーツを組み合わせることで、妥協のない自分だけの理想の走りとポジションを極限まで追求することができます。
汎用コックピットで組む場合の適合仕様と必要パーツは以下の通りです。

- フル内装にする場合: 汎用のACR規格の一体型ハンドル、または同規格のハンドルとステムの別体モデルが使用可能
- 外装にする場合: 頻繁にポジションを調整したい方向けに、ケーブルをステム下へ這わせる汎用ハンドルとステムが使用可能
- 組み立て時の必須純正パーツ: 汎用品を使用する際は専用のベアリングトップキャップ一式が別途必要となるため、BC-STA-644 と SR-STA の2つの品番をご用意ください
5. 結論:R5・S5・Soloist 特性マトリクス
【登坂効率と足あたりの比較】
新型Soloistでの斜度5パーセント、自分の体重の3倍のワット数で時速22キロ巡航時の出力を基準とした場合
- 新型Soloist: 基準となる仕様。410ミリメートルの長いリアセンターによるタメがあり、足あたりが優しく疲労しにくい特性を持ちます。
- R5: 最高効率。斜度7パーセント相当のキツい登りまで、Soloistと同じ出力を維持したまま駆け上がることができます。
- S5: 低効率。パワーが食われる感覚があり、斜度3パーセントから4パーセント相当の緩い登りまでしかその出力を維持できません。
【スプリント・下りの挙動・ケイデンス特性比較】
| 評価項目 | 新型Soloist | R5 | S5 |
| 足回りの設計 | リアセンター 410ミリメートル | リアセンター 405ミリメートル | リアセンター 405ミリメートル |
| クランク位置と加速感 | 3時付近でトルクが掛かる感覚があり、特性はR5に近いです。 | 体重移動した瞬間、即座にダイレクトな反応が返ってきます。 | 2時過ぎから力強い加速が始まり、ロスなく4時の位置でさらに伸びます。 |
| 心地よく進むケイデンス | 毎分80回転から90回転。 回すよりもギアを落としてしっかり踏む設定です。 | 毎分100回転。 上死点から綺麗に回り続ける特性を持っています。 | 毎分90回転から100回転。 進むもののハムストリングスへの負荷が大きいです。 |
| 下り挙動と空力感 | 圧倒的な直進安定性。高速域で壁はあるものの、深いBBドロップにより安心感が極めて高いです。 | 壁を突破する抜けの良さ。姿勢のコンパクトさもあり、風の影響を受けにくく伸びます。 | 壁を難なく突破し加速します。失速感がなく、極めて高い空力性能を誇ります。 |
まとめ
今回のテストで明確になったのは、Cervéloの3モデルには優劣ではなく、明確な適材適所の棲み分けが存在するということです。
平坦での空力を最大化し、極限の高速巡航を求めるライダーにはS5が適しています。
重力に逆らい、厳しい山岳地帯で軽快なレスポンスを求めるライダーにはR5が最適です。
対して新型Soloistは、ある一定の高速域に達すると空気抵抗の壁を感じます。
しかし、Soloistには410ミリメートルのリアセンターと深いBBドロップが生み出す、極めて高い直進安定性という武器があります。
最高速の伸びこそS5やR5に譲りますが、路面に張り付くような安心感があり、下りでの精神的な疲労度や怖さのなさにおいてはSoloistが最も優れています。

これらレース特化モデルの鋭さを実用域へと落とし込み、決して中途半端な妥協ではなく、毎分80回転から90回転という一般的なケイデンスで最も脚を残せる設計が意図的に施されています。
サーキットのような完全な環境ではなく、アップダウンが入り混じり疲労が蓄積する現実の公道において、最も長く、疲労を抑えて速く駆け抜けられるリアルワールドのための実戦型オールラウンダー。
それが、新型Soloistの本質です。
SOLOIST
【各モデルの実測仕様】
■ 新型Soloist
フレームサイズ: 51
コンポーネント: Shimano Ultegra Di2 (R8100) 2×12s
ハンドル: HB18一体型ハンドル(ステム長:90mm / ハンドル幅:380/420mm)
車重: 7.08 kg(ペダルレス)

■ R5
フレームサイズ: 51
コンポーネント: SRAM RED E1 AXS(1×12s フロントシングル仕様)
ハンドル: HB18一体型ハンドル(ステム長:90mm / ハンドル幅:380/420mm)
車重: 6.05 kg(ペダルレス)

■ S5
フレームサイズ: 51
コンポーネント: SRAM RED E1 AXS(2×12s フロントダブル仕様)
ハンドル: HB19一体型ハンドル(ステム長:90mm / ハンドル幅:380/420mm)
車重: 7.15 kg(ペダルレス)

※【注記】本記事に掲載している車体写真は別日に撮影された仕様のため、サドルやコンポーネントの一部がテスト時と異なりますが、実際の比較テスト走行時はすべて同一のポジションパーツに組み替えて検証を行っています。
併せて読みたい
【ヒストリー】”Soloist” なぜこの名だけが特別なのか? 現代エアロロードの歴史と復活の理由
2027年モデルでフルモデルチェンジを果たしたCervélo「So
【新旧比較】軽量化とエアロ性能アップ、重心の最適化。前作との比較で見る新型Soloistの構造
フルモデルチェンジを果たした新型「Soloist(ソロイスト)」の
【詳細解説】軽量化と空力向上を果たした新型Soloistの5つの特徴
平坦、上り、下り。多くのライダーが求めるのは、コースごとに機材を替


