2026年大会のツール・ド・フランスでは、近年の機材の進化と超人的なペース配分により、総合優勝者のレース全体の平均時速は42km/h〜43km/h台を記録するハイペースな展開となっています。
この「レースの高速化」が、登坂区間を含むステージであっても軽量モデルのR5ではなく、空力性能に特化したS5をメインバイクとして選択する最大の理由です。高速巡航時におけるフレーム単体の空気抵抗削減効果が、登坂におけるわずかな重量増のデメリットを上回るという、データに基づいたロジカルな判断が下されています。
フロント30c・リア29c。路面追従性と空力を両立する異径タイヤの選択
足回りのセッティングにおいて最も注目すべきは、前後のタイヤ幅を変える特殊なアセンブルです。今大会ではVittoria Corsa Proが使用されていますが、このタイヤサイズと近年のトレンドである「ワイドリム」の組み合わせに明確なロジックがあります。

- フロント30cタイヤによるコントロール性の向上 フロントには30cという太めのタイヤが装着されています。これを内幅25mmクラスの非常にワイドなリム(本レースでは内幅25.4mmのReserve等を使用)と組み合わせることで、タイヤの空気ボリュームを最大化。高速域や下り区間におけるフロント周りの路面追従性と、コーナリング時のグリップ(コントロール性)を高く保つ設計です。
- リア29cタイヤによる空力の抜けと駆動効率 一方、リアにはフロントよりわずかに細い29cが選択されています。リアタイヤの幅を抑えることで、S5のフレーム(シートチューブのカットアウト形状)とのクリアランスを最適に保ち、後方へ抜ける気流の乱れを抑制。空力性能の低下を防ぐと同時に、踏み込み時のタイヤのたわみを抑えて駆動効率を維持する狙いがあります。
コース斜度でリムハイトを使い分ける、足回りの空力最適化
異径タイヤのポテンシャルを引き出すホイール選択も、ステージごとの斜度や獲得標高に合わせて緻密に変更されています。
- 第3ステージ(山岳フィニッシュ):42/49mmハイトの選択 スペインからフランスへ入る山岳ステージ(レ・ザングル頂上フィニッシュ)では、フロント42mm、リア49mmハイト(Reserve 42/49)が投入されました。厳しい登坂路において、踏み出しの軽さと登坂スピードの維持に必要な軽量性を確保しつつ、最低限のエアロダイナミクスを両立させるセットアップです。

- 第5ステージ(平坦スプリント):57/64mmハイトの選択 ポーでのフィニッシュを迎えた平坦ステージでは、フロント57mm、リア64mmハイト(Reserve 57/64)が選択されました。スプリントチームがコントロールする高速な展開において、ディープリムがもたらす慣性と高い空力性能を最大限に活かし、集団内での出力ロスを抑えながら安全にフィニッシュするための構成です。

まとめ
Team Visma | Lease a Bikeの第1週の戦いを支えたのは、単なる選手の体力だけでなく、状況に応じた機材のロジカルな使い分けです。
平均時速42〜43km/h台という高速展開を見越した「S5」の積極的な投入。極太のワイドリムに対してフロント30c・リア29cという異径タイヤを組み合わせることで得られる、路面抵抗の低減と空力性能の両立。そしてコース斜度に合わせてリムハイトを変更するホイール戦略。
こうした物理的なロスを削ぎ落とす緻密な機材セットアップの積み重ねが、ヴィンゲゴーのタイムロスを防ぎ、マイヨジョーヌ獲得に向けた総合争いを強力にバックアップしています。


