ベースバーは「単なるハンドル」ではない
TTバイクではフレームの空力やホイールに目が行きがちですが、本当に重要なのは「身体が触れる部分(コックピット)」です。その土台となるベースバーには、大きく2つの役割があります。
- 姿勢と重心を作る土台:ベースバーの高さ、パッド位置、エクステンションの長さ・角度を掛け合わせることで、乗り手の姿勢と重心を決定。
- 低さと調整幅の両立:前面投影面積を抑える「限界までの低さ」を基本としつつ、長時間のレースに耐える「ポジション調整幅」を確保。
「低い姿勢を作る基本設計」と「無理なく乗るための調整幅」。この2つを両立させている点に、P5の設計思想の面白さがあります。

極限の低さと、実戦的な整備性の両立
現行P5のベースバーは、空力性能だけを追求したものではありません。低いポジションを作れることに加えて、実際のレースや組み立て、ポジション調整まで考えられた構造になっています。
ブレーキ設定の自由度:完全内装でありながら、左右どちらのレバーでも前ブレーキに設定可能。ライダーの好みや使用する仕様に合わせて、ブレーキレバーの設定を選べます。
ベースバー自体を低く設計:現行P5では、ベースバーの高さそのものを従来モデルから10mm低く設定。スペーサーを入れない状態を基準に、そこからライダーに合わせて高さを調整できる設計です。
さらに特徴的なのが、ベースバーそのものの形状です。

写真を見ると分かるように、ベースバーは単純に水平な形状ではありません。上面からグリップ部分に向かって大きく落ち込んでおり、実測するとその高低差は約30mmに達します。
- グリップ部分のドロップ(30mm落差):ベースバー中央部から左右のグリップにかけて落とし込む設計。握りやすい手元の位置を下げて前面投影面積を極限まで削ぎ落としつつ、DHバー台座の高さを最適化するための立体構造。
- 低さをベースにしたアジャスト性:ただし「低ければいい」わけではなく、この圧倒的な低さをスタート地点(基準)として、ライダーの柔軟性やフォームに合わせて高さを調整していく。
つまり、「限界まで低くできる基本設計」と「そこから無理なく高くできる調整幅」。この2つを両立させている点こそが、P5のポジション作りの基本になります。
ルーティングと接合面の改善:ベースバー内部のケーブルルーティングやフロントフォークとの接合部分も見直され、組み立てや調整を行う側から見ても扱いやすい構造になっています。

整備性まで考えられた「高さ」の調整機構
5のベースバーで特に注目したいのが、高さを調整するための「スペーサー」の構造です。
P5には5mm刻みの分割式スペーサーが標準付属しており、標準状態で最大20mm(別売キット追加で最大40mm)までベースバーを高くすることが可能です。

この分割式構造には、フィッティングと整備の両面で大きなメリットがあります。
- ホースを抜かずに高さ調整が可能:完全内装の油圧ディスクブレーキでありながら、オイル抜きやホースカットの手間をかけず、現場で素早く高さをアジャスト。
- 数mm単位の緻密なアジャスト:5mm刻みのスペーサーにより、ミリ単位で理想のポジションを追求。
ポジションをミリ単位で細かく追い込みたいとき、この「ホースを抜かずにすぐ試せる」仕様は、実際の作業現場やフィッティングにおいて決定的な差となります。


P5は「一体型だから触れない」のではない
最新のTTバイクを見ると、ケーブルやパーツがフレーム内に収まり、ひとつの完成された塊のように見えることがあります。
P5も一体感のあるデザインですが、実際にベースバーを見ていくと、ライダーに合わせて細かく調整するための仕組みがしっかりと用意されています。
- 低い位置からスタートできるベースバー
- 5mm刻みで高さを調整できる分割式スペーサー
- 標準で最大20mm、別売キットを追加すれば最大40mmまで対応する調整幅
- ブレーキホースを抜かずに高さを変更できる構造
一体感のあるデザインと、実際のフィッティングや整備で必要になる調整幅。その両方を備えていることが、P5のベースバーの大きな特徴です。
そして、ベースバーの高さが決まったら、次に考えるのがその上にあるDHバーです。
パッドをどこに置くのか。エクステンションをどの長さ・角度にするのか。そこから身体をどの位置に収めるのか。
P5のポジション作りは、ここからさらに細かくなっていきます。
