富士ヒルクライムで、アイアンマンプロとして活躍するひらめさんが目標であるシルバーを獲得しました。
どのようなトレーニングを行い、本番を迎え、シルバーを獲得したのか。
ひらめさんにインタビューを行いました。
180kmを見据えた強固な土台を築く、24kmの全力走
Q1 アイアンマン(バイクセクション180km)にも挑戦されていますが、今回の富士ヒルは「24kmを出し切る走り」だったのか、それとも「180kmを見据えたプロセスとしての走り」だったのか、どのような感覚で走られていましたか。
富士ヒル当日はアイアンマンのことは考えず、しっかり24kmを出し切りました。
国内でこれほどバイク力の高い方々と一緒に走れる機会は、とても貴重な場です。
今回は「シルバーへの挑戦」という目標と、表彰台も視野に入れながら、しっかり結果を出す気持ちでレースに参加してきました。

ただし、自分の主戦場はアイアンマンなので、富士ヒルの位置づけはあくまでもトレーニングの一環です。

特に今シーズンはバイクの天井を上げることにフォーカスし、3月末から6月中旬までVO2Maxメニューを軸にトレーニングを組んでいます。
アイアンマンに向けた3種目のトレーニングを継続しながらも、富士ヒル直前の2週間だけTTバイクからR5に身体を合わせて調整しました。
高強度フェーズの終盤に迎えた富士ヒルは、トレーニングの成果や乳酸処理能力の向上を確認する場としても、非常に良い機会になりました。
この高強度の積み重ねが、最終的にはアイアンマンの長い距離を速く走りきるための強固な土台につながります。
軽さと推進力が生み出す、集団内で確実に脚を休める追従性
Q2 今回、佐野淳哉さんはエアロロードのS5にディスクホイール仕様で参加されていました。実際に走ってみて、軽量なR5とエアロ性能を重視したS5では、来年出るのであればどちらのバイクを選択しますか。
S5に乗ったことがないので難しい質問ですが、R5が最高すぎたのでまたR5で出たいです。
R5は富士ヒルにおいて、かなり「休めるバイク」だったと実感しています。

今回の富士ヒルでは幸運にもトレインの後方で走る時間がとても長かったのですが、前が詰まったときにパワーを落としてくるくると軽く楽に付いていくことができました。
逆に前との間隔が急に開いてしまったときにも、軽さと推進力の効果で再加速がものすごくスムーズです。
脚に無駄な負荷を与えることなく、定期的に脚を回復させながら上ることができました。
最後まで全くタレることなく走りきれたのは、R5がライダーの体力を高い次元で守り、次の加速への余裕を残してくれたからです。
不慣れな集団走行でも恐怖心を感じさせない優れた操作性
Q3 一般的に軽量バイクは上り性能に特化する一方で、下りや全体のバランスが犠牲になるケースもあります。R5は「軽さ」に加えてエアロ性能や下りでの安心感・操作性も重視して開発されていますが、今回実際に乗られて、そのコンセプトの片鱗や印象に残った部分はありましたか。
安心感と操作性はすばらしく感じました。
富士ヒルは集団が形成されやすく、追い抜きや追い抜かれも多発するため、他の選手との距離がかなり近くなるタイミングが多いです。
一方でアイアンマンはドラフティング禁止のため、練習でもレースでも人の近くで走ることがほとんどなく、集団走行に慣れていません。

そんな私でも、富士ヒルでは前の選手の急なダンシングや、追い抜きの中での急な加減速、進路変更を余儀なくされる場面で、怖さを感じることなく容易に対応できました。
R5を納車して乗り始めてから2週間という短い期間ですぐに適応できたのも、この扱いやすさのおかげです。
優れたハンドリング性能により、予測しにくい周囲の動きに対しても恐怖感を覚えることなく、冷静に対処できます。
レース後の下山やコーナリングもストレスを感じず、走行後の体に余計な疲労を残さないため、下山後すぐに快適にランニングへ移行できるほど体力を温存しやすくなります。
レース後半のタレを防ぎ、最後まで踏み込み続けるための綿密な補給
Q4 機材以外で、今回のタイムや走りに影響した要素(補給・空気圧・ペーシング・体重管理など)があれば教えてください。
補給は、普段から使い慣れているアイアンマンと同様の補給を使用しました。
レース中は呼吸に集中できるよう、糖質は事前にしっかり摂り、ジェルもスタート直前のパレード走行中に補給しています。
前日はMaurtenのドリンクミックス320を2本と、プレシジョンの電解質タブレットを移動中や受付中に少しずつ摂取。
当日の朝はドリンクミックス320を1本と電解質タブレットを準備し、アップで半分、レース中に残り半分を摂取しました。
さらにMaurtenのジェル100を、スタート直前までに3本摂取しています。

空気圧はヒルクライムでの転がりを考慮し、高めの5.5barに設定しました。
ペーシングは「序盤は絶対に上げない」と心に決めていましたが、付いていこうとしたトレインが速すぎて最初の10分が予定外の過負荷になりました。
そこで無理をせずトレインから離れて自分のペースを取り戻し、集団に付けるタイミングで休めるときにしっかり回復しながら耐える走りをしました。
本来ならば崩れてしまうようなレース展開でしたが、R5の推進力のおかげで、一度上がってしまった脈を落ち着かせ、後半に再び脚を動かしやすくなりました。
日々のトライアスロンの練習を継続していく中で、ヒルクライムでの走力を事前に見極めることが難しいので、事前にカッチリトレインを組まずに、走りながらその日の調子に合うペースの人を見つけて着いていくというプランがよかったかなと思います。
走りのスタイルに合わせて選ぶ、R5とS5の選択基準
Q5 ひらめさん目線で、一般ライダーが富士ヒルを走る場合、R5とS5はどんな人に向いていると思いますか。また、今後のレーススケジュールや、R5とのこれからの付き合い方について教えてください。
R5は、今回の私のように「集団内でタイムを狙う人」に向いています。
また、操作性の高さから、あまりロードバイクでの外乗りに時間を割けない人や、初心者の方でも安心して乗りこなせます。


S5は、「主催者選抜クラスで勝ちに行く人」や、「集団の先頭を引っ張る人」に向いている印象です。
富士ヒルは緩斜面も多いので、単独走になるタイミングが多かったり、先頭を引く時間が長かったりする場合には、エアロ性能の高さが大きな味方になります。
今後の予定としては、アイアンマンプロカテゴリーでの挑戦として、まずは世界選手権(KONA)へプロ枠で出場することを第一目標にしています。
2026年は3月のニュージーランドに続き、8月のカルマル(スウェーデン)、12月のウェスタンオーストラリアでKONAスロット獲得を目指してチャレンジしていきます。
アイアンマンはバイクパートが最も長く、まだまだ強化が必要であるため、メインバイクであるP5でのトレーニングに加えて、R5を使っての山岳トレーニングや、リカバリーライドもうまく組み合わせながら、バイクの総力をバランスよく引き上げていきます。


