Where Innovation Thrives

ASSOS ファミリーの隠れたメンバーを紹介しよう。 バルカン半島にひっそりと佇む空港から、すべてのASSOS ショーツが製造されるブルガリアのASSOS生産工場まで車を走らせている間、話題はいつしかレモンの木に変わっていた。工場長であるスタブロスが、彼の愛する柑橘類の木をこの地域の冬の寒さから守る方法について熱弁していたのだ。 霜が花をダメにする。そして花がダメになれば、果実は実らない。最先端のサイクリングアパレルの織物、縫製、製造とは無関係に思えるが、彼の目には、最高の製品を工場で作り出すためのディテールと決意も同じこととして見えているのだ。生地、ステッチ、アパレルの構造へと話題が変わったのは、後になってからである。彼は、様々なことに詳しいのだ。
あまり広く知られてはいないが、サイクリング業界で自社生産施設を持つアパレルブランドはほとんどない。多くのブランドが莫大な資金を掛けて施設を建設するより、イタリア北部、ポルトガル、そして東アジアに位置する第三者の生産施設に製造を依頼する中で、ASSOSは違う。 ここはASSOSが全てを所有する施設であり、革新的な製品が生まれる場なのである。今は2018年12月上旬。スタブロスは、S9 ショーツの生産に奮闘している最中だ。

熟練した手から、製品がいとも簡単に生み出される。

ASSOSは、生地の開発から生産と物流までの全てに誇りを持って製品を製造している。 つまり、選ばれた生地の生産業者と協力し、ASSOS独自の施設を設立して製造を行っているのだ。

各部位に分かれたS9 ショーツを見るまで、どれほど複雑であるかは想像もつかないはずだ。

  ASSOSでの新製品開発に要する時間が最長5年で、約80種類もの試作品を開発することを考えると、一つひとつの部位に新たなテクノロジーとアイデアが惜しみなく注ぎ込まれているのは明らかだ。 第三者の生産施設に依存すると、開発自体が滞り、機密情報が流出するリスクがあり、品質管理を確実に行えない。これは、ASSOSの選択肢にない。
スタブロスははかりを取り出し、生地の1平方メートルあたりの重量を計った。 ここでスタブロスとこの工場が、あまり知られていないものの、ASSOS ファミリーにとって非常に重要な役割を担うことがわかるだろう。 時計の修理工とエンジニアの息子である彼は、若き頃から教え込まれた忍耐力とディテールを見逃さない眼を持っている。次に彼は、自らが所有する車(走行距離は60万km)の1km当たりの維持費、生産台数、絶えない故障を紹介し、私たちを楽しませてくれた。彼の口からは、次々と数字が発せられた。また、彼がドイツで受けた機械工学の教育が、今の仕事で活かされていることは明らかである。 彼は、生地を異なる形に裁断し、生産工程の能率を上げる、自らデザインした機械を私たちに堂々と自慢した。

現代の自動化生産を持ってしても、ここでは人間の手とハサミに勝るものはない。

  工場は現代的な外観が特徴的で、ASSOS独自の施設であることを示すASSOS ロゴが描かれた自動ドアを抜けると、S9 ショーツの生産真っ只中であることもあり、従業員が忙しく働いていた。 様々な機械が吐き出す音は、ミニマル・テクノのアーティストなら喜んで録音することだろう。この機械音は、ベテラン作業員たちが毎日聴くBGMであるが、耳を澄ませば、その音にかき消されそうに、ブルガリアのラジオ番組も鳴っていることがわかる。

どこを見ても、S9の赤い生地が目につき、織物マニアの私たちを掻き立てた。

  「それぞれのショーツには、生地の裁断から袋詰めまで、約60もの製造工程がある。つまり、どのショーツもそれだけ品質管理されているんだ」と、S9の各製造工程を指差しながら、スタブロスは説明する。 彼は続けてこう言った。「生産水準は非常に高く、従業員は誇りを持っているから、作業が好きさ。作業をたくさんこなすのではなく、より丁寧に行うのが僕らのモットー。生産数を増やさないといけなくなったら、今いる従業員にペースアップを促すのではなく、従業員の人数を増やすだけ」。確かに納得できる。彼も誇りに思っているのは明らかだ。  

ショーツを折り畳むことさえ、正確で複雑な手順が求められる。

  「ASSOSの一部として20年近く働いてきたが、スタブロスはASSOSの水準を保つことに長けていると言える。彼は、ASSOS創立者が当初は縫い目を引っ張ってテストしていたことを思い出し、温かく笑った。この手法はすぐに取り入れられ、それ以来、彼はASSOSで働いている。 最近、スタブロスは工場での作業が誰であっても適しているわけではないと強く懸念しており、それゆえ、従業員の幸せが多ければ多いほど良いというアプローチを取ってきた。「街の中心部から工場まで、無料で皆をバスに乗せている。この工場は新しく、労働環境は素晴らしい。従業員の雇用は僕ら次第だけど、全員を雇い続けたいから、プレッシャーを感じるよ。訓練に時間をかけたんだから、辞めてもらわないようにしないとね。それに、当初からのメンバーの多くは、まだここで働いているんだ」。 彼は、冬の太陽が差し込む縫製室をゆっくりと歩き、従業員に挨拶して回った。彼らもまた、ASSOS ファミリーなのだ。

工場のあちこちで従業員がせわしなく動き回る。訪れる部屋ごとに、私たちは暖かく迎え入れられた。

  工場のどこを見ても、生産の各段階で熟練した手が器用に作業を行っている。S9 ショーツの製造がこれほどまで技術的に複雑なのかと、初めて目の当たりにした時は驚いた。 S9 ショーツの新機能であるrollBarとA-Lock システムは、従業員の訓練が必要となる特徴だ。縫い目が1つだけの構造は、見た目こそシンプルであるものの、従業員が実演した通り、製造が非常に複雑だ。ショーツ1枚が完成するまでにかかる時間は約40分。これは、前作S7 ショーツの約1.3倍である。ショーツの快適さや性能は履けばすぐにわかるが、どこでどのように製造されるかまでを考えることは少ないだろう。 革新は、倫理的な生産方法と同様に、投資を必要とするもの。これら2つは、その一部となることができて私たちが誇りに思うものであり、この工場を設立した理由である。

ハイテクなサイクリングアパレルを作るというのは、複雑な作業なのだ。

  初冬の太陽が山を黄色く染め出す頃、私たちは工場を後にした。従業員たちも同時に退勤し出した。今ここにバイクがあれば、東欧の山道を存分に楽しむことができたのに、と思ってしまった。

次回は、バイクも持参してこの地域を探索してみたい。

  スタブロスは最後に、気温や太陽の軌道も説明しながら、桃の木を植え、果樹園を作る予定の土地を見せてくれた。園芸をこよなく愛する温厚な彼が、またしても生き生きとし出した。そんな彼が育てた果物は、美味しいに決まっている。  

レーザーを用いて、生地を正しい場所に配置していく。

  Team Dimension Dataが履くことになっているS9 ショーツの初回生産分を手にし、元気よく別れの挨拶を交わして、スイスへの帰路に着いた。 あなたの手元にショーツが届くことを楽しみにしていてほしい。  

EQUIPE RS BIB SHORTS S9

スタンダードレーシングモデル EQUIPEショーツのフルモデルチェンジ版。 ビブ部分が外側まで伸びた、ロールバー構造をはじめとした、 特徴的なA-LOCKエンジニアリングと名付けられた5つのテクノロジーが 融合することで、パッドを安定させて異次元のフィット感を実現。
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  • サイズ : XS – S – M – L – XL – XLG
  • カラー : Black Series / National Red
  • LINE:EQUIPE RS

EQUIPE RSR BIB SHORTS S9

EQUIPE RS BIB SHORTS S9の超軽量上位モデル。 S7世代の最上位モデル T.カンピオニッシモに採用されている Type.701平織りヴォーヴェンファブリックを使用。 ファブリックの強度が上がり、パッドに十分な安定性がもたらされることで、 ロールバー構造が不要になっています。
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  • サイズ : XS – S – M – L – XL – XLG
  • カラー : Black Series
  • LINE:EQUIPE RS
 

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