試乗で語られた「軽さ」の要因を紐解く
前回、我々は新型R5(51サイズ)のフレーム単体重量「649.5g」を目の当たりにしました。しかし、路上で感じる「軽さ」の本質は、フレーム単体の数値だけでは語れません。
Vol.2では、前作との比較を行い、1g単位の執着が走行時の挙動にどのような変革をもたらしたのか。
その実測値から「軽さ」の正体を紐解いていきます。

徹底比較:旧型 vs 新型 実測データ
計測条件を揃えた、純粋な比較データです。数値を並べてみると、新型R5が追求した「動的バランスの変革」の輪郭が、より鮮明に浮かび上がってくるのではないでしょうか。
| 部位 / パーツ名 | 前作(旧型)実測値 | 新型 R5 実測値 | 備考 / 差分 |
| フレーム (51サイズ) | 672.0g | 649.5g | いずれも箱から出した塗装済。 /-22.5g (3.3%) |
| フォーク (51サイズ) | 330g | 306.0g | いずれも箱から出した塗装済。 /-24.0g (7.3%) |
| ハンドル (400mm) | 240.0g | 269.4g (ステム長90mm) | 新型はステム一体型としての数値 |
| ステム (90mm) | 157.0g | (ハンドル一体) | 前作合計:397.0g / 新型合計:269.4g / -127.6g |
| シートポスト | 186.0g | 135.0g | いずれも未カット・ヤグラ込 / -51.0g(27.4%) |
| シートクランプ | 18.0g | 12.8g | -5.2g (28.9%) |
| フォークプラグ | 30.0g | 23.8g | -6.2g (20.7%) |
| ヘッドベアリング | 72.0g | 39.6g | -32.4g (45.0%) |
| 合計重量 | 1,705.0g | 1,436.1g | -268.9g (15.8%) |
一体化という、最も贅沢な軽量化
ハンドルとステム。別々のパーツを繋ぎ合わせていた部位を、ひとつのカーボン構造体として統合することで、コックピット周りだけで127.6g(約32.1%)という劇的な軽量化を達成しました。その執念は、フォークコラムの固定ボルトや、メーターマウントの固定ボルトに至るまで、細部の素材や形状をすべて見直すまでに及んでいます。

コックピット周りだけで約127.6gの削減。実測値269.4g。
さらに注目すべきは、ヘッドベアリングの45%削減や、シートポストの27.4%削減といった、細部への徹底したアプローチです。

45.0%の軽量化を達成したヘッドベアリング。実測値39.6g。

未カット・ヤグラ込で135.0g。27.4%の削減が「振り」の軽さに直結します。
フレーム単体での削減率(3.3%)に対し、これらの周辺パーツがいかにドラスティックに削ぎ落とされているかが分かります。
フレーム単体の軽量化もさることながら、車体の上方に位置するハンドルやシートポストを徹底して削ぎ落とし、重心から遠い末端部を軽くしたことが、ライダーの感覚に最も強く作用しています。これが、ダンシングやバイクを倒し込む際の「数値以上の軽快さ」へと直結しているのです。
高重心部の軽量化が「振り」を支配する
試乗会場で多く聞かれた「数値以上に軽く感じる」という声、そして「苦手なはずの登りを少し楽しめた」という一言。その正体は、バイクの重心から最も遠い「高い位置」の集中した軽量化にあります。
フレーム単体での差は22.5g。しかし、先述のハンドル・ステムで127.6g、シート周りで約56g(ポスト+クランプ)の削減が加わります。これらはダンシングの際、バイクを左右に振る際の「慣性モーメント」を劇的に減少させます。
「システム全体で250g以上を削る」という設計思想の矛先が、この高重心部に向けられたことで、数値以上の「振りの軽さ」をライダーに提供しているのです。
撮影車体情報
- フレームサイズ: 51
- ステム長: 90mm(一体型ハンドル)
- サドル高: 680mm(BBセンター〜サドル上端)

次回予告
次回は、この「鋭さ」の裏側に隠された「安定性」の秘密に迫ります。
【R5 解体新書:連載予定】
- Vol.1:軽量化の数値的裏付けと設計思想(完)
- Vol.2:試乗で語られた「軽さ」の要因(今回)
- Vol.3:路面追従性を高めるヘッド剛性の抑制
- Vol.4:重心高とジオメトリーの変化がもたらす安定性
- Vol.5:最新規格への対応とフレームの継続性
- Vol.6:S5との性能的な棲み分け



