【機材考察】女子ジロでR5が選ばれる理由

過酷な山岳ルートが連続した女子最高峰のステージレース「ジロ・デ・イタリア・ウィメン」。

Team Visma | Lease a Bikeは緻密な機材戦略を展開し、エースのフェムケ・デ・フリースが個人総合6位の快挙を成し遂げました。

■ Team Visma | Lease a Bike(エース:F・デ・フリース)の成績

  • 7月10日:第4ステージ(山岳TT) – ステージ7位
  • 7月13日:第7ステージ(クイーンステージ) – ステージ5位
  • 7月14日:個人総合(GC) – 最終6位

エアロロードが存在感を強める現代のレースにおいて、チームはなぜ勝負どころの山岳ステージで「R5」を選択する場面があったのか。
そこには、私たちがロードバイクを選ぶときにも参考になる、軽さ、空力、そして出力の考え方が隠されています。


学び1:コースに合わせた最適解(山岳TTの特殊事例)

登坂力が試される第4ステージの山岳タイムトライアル。ここでチームが投入したのは、軽量モデルのR5ではなく、TTバイクの「P5」でした。

しかし足回りには、通常のディスクホイールではなく主に「R5」に組み合わされるRESERVEのローハイト軽量ホイールを選択しています。

前半の平坦をP5の空力で稼ぎ、後半の急勾配をホイール外周部の軽さでこなす。
空力と軽量性のクロスポイントを見極めた、プロならではのハイブリッドセッティングです。


学び2:S5とR5。優劣ではなく「役割の違い」による明確な使い分け

1. コース特性と任務に応じた、Cervéloの「2枚看板」

最大斜度14%を超える最難関「ブロックハウス」が設定された第7ステージ(クイーンステージ)。
この極限の山岳区間で先頭を引くアシストのフェム・ファン・エンペル(身長173cm / R5 51サイズ)と、後ろに控えるエースのフェムケ・デ・フリース(S5 54サイズ)の機材に注目してください。

S5は、高速域や空力が効く場面で圧倒的な強みを持つバイクです。
一方で、急勾配が長く続く厳しい山岳ステージで、自身が風よけとなって目標地点まで引き切るという任務を負うアシスト選手にとっては、軽さや登坂時の反応の良さがより重要になります。

R5が選ばれるのは、決してS5が登りで劣るからではありません。その日の任務やコースの特性に対し、不要なワットの消費を抑え、より効率よく軽さを活かすための判断がそこにあるのです。

この考え方は、我々ホビーサイクリストにとっても重要なヒントになります。
「最もキツい激坂区間」で少しでも出力をセーブし、最後の最後に自己ベストを更新したい時、R5の軽さは大きな強みとなります。


2. パリ〜ルーベを制した「R」の血統。1日を通した軽快さ

Cervéloの「R」シリーズは、かつて軽量バイクでありながら過酷な石畳レース(パリ〜ルーベ)を制した、高い路面追従性の歴史を持っています。
現行のR5は、特定のチューブ形状のみに頼るのではなく、フレーム全体のカーボンレイアップ(積層)を徹底的に最適化しています。

R5はヒルクライムだけのためのバイクではありません。
長時間のライドでも脚が売り切れない絶妙なウィップ感(タメ)を生み出すそのしなやかさは、イベントや週末ロングライドの後半、疲れ切った足でも最後までリズミカルにクランクを回し続けるための心強い味方になります。


3. プロの声を反映した「ヘッド剛性の引き算」による安定感

ただ数値を上げるための剛性強化ではなく、実戦でのコントロール性を追求するのがCervéloのインテリジェンスです。
現行のR5は、チームからの「前作は硬すぎて下りでバイクが跳ねる」というシビアなフィードバックを受け、あえてフロントフォークからヘッド周りの剛性をミリ単位で最適化(引き算)しています。

これにより、荒れた高速ダウンヒルでも前輪が路面に吸い付き、跳ねることなく路面を捉え続けるニュートラルなハンドリングを実現しました。
登りで脚を使った後でも、下りで落ち着いてバイクを扱える安心感は、1日を通したライド全体の疲労を軽減してくれます。


■考察:250W前後の出力帯から考える機材選び

ここまでチームの戦略や機材の特性を見てきましたが、「世界のトッププロと自分たちではレベルが違う」と思われるかもしれません。確かに、女子トッププロとホビーライダーでは、走行速度もレース環境も異なります。

ただ、ペダルに伝えている「絶対的な出力(ワット数)」という点に目を向けると、機材選びを考える上での面白いヒントが見えてきます。

対象ライダー目安体重FTP(W/kg)絶対出力(ワット)
女子トッププロ50〜55kg約5.0W/kg約250〜275W
一般ホビーライダー65〜70kg約3.5〜3.8W/kg約230〜260W

世界最高峰を走る女子プロ選手のFTPは驚異的なパワーウエイトレシオを誇りますが、軽量な体格ゆえに、バイクを前に進める絶対的なワット数は約250W前後に落ち着く場面が多くなります。 これは、日本の平均的な体格(65〜70kg)のホビーライダーが、トレーニングを重ねて達した時の出力と重なる部分があります。

250W前後という出力帯でバイクを進める際、軽さ、反応、そして扱いやすさをどう活かすか。 男子プロの400Wオーバーの世界とは異なる速度域や環境において、R5が持つ「しなやかさ」や「登坂での軽快さ」は、我々ホビーライダーにこそ、機材の恩恵を最大限に引き出すための明確なアドバンテージをもたらしてくれます。

プロが極限の山岳レースで示した機材の使い分けは、我々一般サイクリストの走り方を広げるヒントに満ちています。
自らの限界に挑むヒルクライムで出力をセーブしたい時、あるいは、荒れた路面や長い下りを含むロングライドを1日中軽快に楽しみたい時、Cervélo R5はあなたの走りを豊かにする素晴らしいパートナーです。

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