自転車の動力を伝えるチェーン。
人の力を自転車の推進力に変えるパーツのうち、
最も動いていて、人の力と直結する部分になります。
チェーンは、いろんなパーツで構成されており、
それぞれが細かく、表面上綺麗に見えても実際はまだ汚れが残っていることもあります。
その状態で注油をしてもかえって汚れを呼んだり、本来のルブの性能を発揮できないことも。
今回は、自転車のチェーンの構造から適切な洗浄方法、そして適切な注油方法までご紹介します。
チェーンの構造について
掃除の前にはまず構造を理解することが重要
■チェーンの構造

・アウタープレート
・インナープレート
・ローラー
・ピン
で構成されています。
ローラーを挟んだインナープレートを外からアウタープレートで挟み込み、ピンの圧入して固定されます。
■チェーンの擦れる部分
擦れる部分を順番にイメージしてみると、インナープレートがすべてのパーツと擦れ合う事がわかります。

■黒い汚れの原因
・チェーンについているルブに砂埃や泥など外からの汚れが付着
・金属同士が擦れ合って出た鉄粉。

外からも来るし、自分からも出るのが汚れです。
■汚れのある場所
外からぱっと見える部分はある程度拭き取りで汚れを落とす事ができますが、後から後から黒い汚れが滲み出てきたことはありませんか?

これは、さっきのチェーンの擦れる部分で、外に露出していないところから出てくる汚れです。

汚れの落としやすさ順で行くと
1.外から拭き取る事ができるアウタープレートや、外に露出している部分
2.対のアウター/インナープレートの隙間。チェーンリングが通るところ
3.アウタープレートとインナープレートが擦れる隙間
4.インナープレートとローラーが擦れる隙間、インナープレートとピンが擦れる隙間
下に行くほど、チェーンの深いところでブラシが届かないところになります。
チェーンの洗い方①
◼️室内でクイックに(水なし洗浄)
速乾性のあるクリーナーを使用するので、室内でもできる最も簡単な洗浄方法です。
手軽さ★★★★★
洗浄力★★
所要時間:5〜10分

◼️使用アイテム
高圧のジェット噴射でブラシを使わずに一気に汚れをおとし、
揮発性が高く溶剤が残らないので、水を使わずに洗浄できる方法です。
◼️方法
チェーンのコマ、プレートめがけて直接スプレー。
ブラシを使わず、高圧ジェットで汚れを掻き落とします。

ウエスやタオルでクリーナーを受け止めながらスプレーし、チェーンを軽く拭き取ります。
メリット:早くて簡単なので気軽にできる。水を使わず室内でできる。
課題:到達できる汚れのレベルが1〜2まで。揮発性が高いため汚れが溶け切る前に揮発してしまうため、一気にはできない。
こんな方におすすめ
・普段からまめに洗浄している方
・マンションにお住まいの方など、水を使えない環境の方
チェーンの洗い方②
■水を使ってじっくり
手軽さ★★★
洗浄力★★★★
所要時間:10〜20分

◼️使用アイテム
◼️方法
ディグリーザーを噴射して汚れを落として水ですすぐorパーツクリーナーでディグリーザー成分を除去

チェーンをつけたままでも、チェーンを外してしっかり洗浄してもOK
石油成分がチェーンの中に浸透し、コマ内部も洗浄できます。
ただ、そのままだと石油成分が残ったままなので、ルブを塗布すると一緒に溶けてしまいます。
水洗いor揮発性のあるクリーナーで洗浄する必要があります。
効果:ディグリーザー成分が汚れに浸透して油汚れを溶かしてくれる。室内でも可能。
課題:到達できる汚れのレベルは1〜3まで溶けた油汚れがチェーンに残るため、拭き取りに時間がかかる。ディグリーザー成分をきっちり落とす必要あり。
こんな方におすすめ
・時間をかけてしっかり汚れを落としたい方
・チェーンやパーツを外して洗浄したい方
チェーンの洗い方③
◼️水を使って素早く洗浄
手軽さ★★★
洗浄力★★★★
所要時間:3分〜5分

◼️使用アイテム
◼️方法
洗剤を噴射して汚れを落として水ですすぐ

クイックに洗浄できるよう、少し強力な洗剤をしているので、
3分以内に水洗いが必要です。
ただ、スプレーした瞬間に汚れがドバドバ落ちていくので、
時間をかけずに洗浄ができるのが特徴です。
効果:到達できる汚れのレベルは1〜3まで。洗剤成分が汚れを浮かして、ディグリーザー成分が油を溶かす。その後汚れを乳化して包み込むので汚れのチェーン離れが早い→水ですすぎ汚れがきっちり落ちる
課題:水のすすぎが重要に。
と、ここまでが自宅でDIYでできるレベルに。
チェーンを自転車から外して上記作業をすれば、より確実に汚れを落とすことにつながる。スプロケやチェーンリングの汚れも同じように洗える。
こんな方におすすめ
・素早く、綺麗に洗車したい方
・汚れが溜まっている方
チェーン洗浄おすすめアイテム
チェーンを洗浄する時、
・ブラシをつかってうまく洗浄できない!!
・簡単に洗浄したい!!
という方におすすめなアイテム
おすすめポイント
スムーズに回転
チェーンを真っ直ぐに装着されるので、
ペダルを回転させても抵抗が少なく、簡単に洗浄できます。
常に新しいクリーナーで洗浄
クリーナーは上部のタンクから点滴のように垂らします。
常に新しいクリーナーで洗浄できるので、効率よく洗浄できます。
クリーナーの使用量も最小限で済みます。

汚れたクリーナーがブラシにつかない
チェーンの汚れを落としたクリーナーは下のタンクに落ちます。
落ちたクリーナーは傾けても絶対にブラシに付着しないようになっており、
チェーンへ汚れが際付着することを防ぎます。
詳しいマシンの内容はこちら
チェーンの洗い方④
◼️究極のチェーン洗浄
超音波洗浄
超音波の力でクリーナーをコマ内部まで浸透させ、汚れを取り除く

どれだけ手作業で洗浄しても完全に汚れを落とし切ることはできません。
そのため、超音波の力を使って、ブラシが届かない場所の汚れをかき出します。
効果:超音波により、成分がチェーンの奥深くまで浸透して汚れを落とす。
課題:きっちりディグリーザーがチェーンの内部まで届く分、その成分を後からルブに置き換えるのが困難。もしくは、漬け込みが甘いと空気が入りチェーンルブが内部まで浸透しない。
これを解決するには、超音波でルブを再度浸透させる方法になりますが、これがなかなか個人レベルだと難しくなります。
これをMuc-Offはサービスとして提供しています。
注油をする前に。
洗車した後は必ず水気を取りましょう。
チェーンが錆びる主な原因は、水です。
水と油は分離してしまうので、うまくチェーンをコーティングできずに流れてしまいます。
しっかりと水気が取れていないとすぐに錆が発生します。

水気がしっかり取れた状態

水が残った状態で放置
水気が残った状態で注油をしても、チェーンに定着しないので、
拭き取ったときにルブが落ちてしまいます。
簡単に水を排出することができるアイテム
濡れたドライブトレインにスプレー、拭き取るだけ
洗車後のドライブトレインにスプレーすると、
水置換の成分によってチェーンの内部の水も素早く排出されます。
チェーン注油方法について
洗浄後は中を必ず行いましょう。
チェーン洗浄後は全ての油分が取り除かれるため、錆が発生しやすくなっています。
また、注油をせずに使用してしまうと、チェーンおよびカセット、チェーンリング等の劣化を早め、パーツの寿命が短くなってしまいます。
■チェーンルブの目的
・走行時の抵抗を減らす
・パーツ寿命の向上
・防錆
チェーンは複数のパーツが連結しており、チェーンプレート、チェーンリング、カセットスプロケットなど様々な箇所で金属同士が接触します。
赤いマークの箇所が特に擦れ合う場所で、金属同士が接触すると摩擦抵抗が発生します。
この抵抗を減らすために、チェーンルブが存在します。

ただ、やみくもに注油をするをしてしまうと汚れを拾いやすく、かえってチェーンの抵抗が大きくなってしまいますので、適切な箇所に適切な量を塗布しましょう。
◼️注油をする場所と構造

■注油する箇所

注油する箇所は矢印のチェーンのコマです。
チェーンのコマの構造は、上のようになっています。

このようにコマの中が空洞になっており、
表面張力の力でこの中にルブを蓄えることができます。
走行していくうちにこのコマの中から少しずつチェーンオイルが滲み出て、
常にチェーン周辺にオイルがある状態を作ります。
①チェーンのコマに注油

チェーンの内側(チェーンリングなどが接触する側)から注油します。
クイックに行う場合はクランクを逆回転させながら注油することもありますが、
それでは余分にルブがつきすぎてしまうため、
余裕がある場合は、コマにめがけて1滴ずつ行ってください。
この時、ミッシングリンク付きのチェーンであれば、そこを起点に塗布をすると、既に注油したかどうかがわかりやすいです。

UV対応ルブなら付属のライトで確認できる
マックオフ独自のUV対応ルブ。
付属のUVトーチを照らせば、ルブが塗布されているかどうかの確認ができます。
・UV対応モデル
②3〜4時間放置
チェーンルブがコマの内部に浸透するまで放置します。
注油後はまだ表面にしかルブが入っておらず、そのままライドをしてしまうと汚れがつきやすくなったり、本来の耐久力を発揮できません。
③ウエスで拭き取る
サイドプレートに付着した余分なルブを拭き取ります。

チェーンを横から挟み込み、クランクを逆回転させて拭き取りを行います。
この時、チェーン全体を包み込むのではなく、あくまでサイドのプレートを拭き取るイメージで行ってください。
チェーンの構造と、汚れの正体。
そしてそれをどう取り除くのか。
自転車の中でホイールと同じく、一番動き続けるパーツで効率に直結するチェーン。しっかりメンテしていきましょう!!
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