安心して乗り続けられる新型Mシリーズのテストについて

先日発表された新型Mシリーズ。振動吸収性の向上やアウターニップル化しメンテナス性が向上したなど実際に使用するライダーにとってメリットの多い進化をしました。

これらの進化も素晴らしいですが、ENVEは18年以上の経験を元にタイヤやホイールのトラブルで走れないをなくす「ノーロストラン」というテーマを掲げテストラボ、トレイル両方でテストと研究を行い製品開発が行われました。

新型Mシリーズの目標
ワールドカップDHシーズンで「ノーロストラン」

ENVEがサポートするダウンヒルチーム「Commencal/Muc-Off by Ridding Addiction」はタイヤやホイールの故障により走行を中断したくないと考えていました。
毎週のレースでは時間が限られています。
試走のほかにバイクの調整や、スタートへ移動するリフトの待ち時間。トレイルの観察なども行い、プロのダウンヒル選手といえどレース前の練習に使用できる時間は数時間程度。

そんな中パンクや、パーツが壊れてしまうなどトラブルが起こってしまうと貴重な練習時間が奪われてしまいます。特に走行不可のようなピットまで歩いて帰らなければならない状況などは特に時間が奪われます。
レース前の試走が十分に行えていないと本来のパフォーマンスが発揮できません。

2023年ENVEのホイールはチームの練習やレースでパンクやリムが原因での走行不可0の「ノーロストラン」の目標を達成しました。

この結果から新型Mシリーズが一般のライダーにも使用してもらえるものだと自身が付きました。

ENVE リムの強度はどのくらいですか?
また、どのようにテストされますか?

グラビティ系のカーボンホイールを製造した最初の企業として、ENVEはMTBホイールの強度を評価する衝撃テストを作成しました。ENVEでは世代ごとに衝撃テストを改良し、今作ではトレイルでの過酷なライドが長時間ではどのような影響を及ぼすのかについて理解するために新しいテストを作成し合計3つのテストで耐久性を測定します。

各テストはタイヤを取り付け既定の空気圧が入った状態で行われ、様々な高さや角度で重りが落とされます。
実際のライドでは、サスペンションやライダーの動きにより衝撃が緩和されますが、シミュレーションでは、ホイールは機械に固定されるためより大きな力がホイールに加わります。

ENVEの3つのテスト基準

1. 標準衝撃テスト

2007 年に制定されたこのテストでは、リムに直接重りを落とし、リムの両壁に同時に衝撃を与えます。これは、ジャンプをするときや、段差を超える際に車輪を持ち上げるのに失敗したような、角張ったエッジの衝撃を模倣したものです。

重りの高さは、最初の目に見える損傷の兆候が現れるまで徐々に増加します。
各分野の ENVE 標準衝撃テスト要件は、XC系 = 25.4cm(10インチ)、トレイル系 = 30.48cm(12インチ)、グラビティ系 = 35.56cm(14インチ)です。

このグラフでは、青が新型のMシリーズ。赤が前作のMシリーズを表し、重りを落とす高さを表しています。

この結果の通り、新型M5ProとM6は前作のMシリーズに比べ衝撃に強くなっています。M8とM9Proは前作と同じような結果となっていますが、この結果は損傷の兆候が見られ始めるタイミングとなっており、通常はスポークホール周りの小さな亀裂です。しかし、前作のM730やM930は完全に破損することが良くあります。

この違いはトレイルでホイールが壊れた場合、押して歩いて帰らないといけないのか、乗って帰られるかの違いになります。
ここからさらに高い位置から落とし続けないと、新型のM8/M9Proは完全に破損しませんでした。

2. 片面衝撃テスト

このテストは2014年に追加されたテストプログラムです。
テスト1と異なり両側ではなく、実際によくある衝撃を再現するため、片側だけに重りを落とします。

横方向の過重とリムへの衝撃は、ひび割れやへこみが発生しやすくなります。テスト1では、衝撃がリム全体に分散されるのに対し、このテストではリムに対してピンポイントな衝撃が加わります。

このテストでは、耐リム打ちパンク性能を確認するためにも使用されています。

トレイル系やグラビティ系などそれぞれのライドスタイルに合わせたワイドフックレスビードの導入により、このフォーマンスが向上し、リム片側にかかる力を適切に管理できるようになりました。

3. すべてのスポークホールへ衝撃テスト

最後のテストは、2021年に新たに追加されたテストです。
このテストでは、各スポークホールに衝撃を与え続け蓄積された衝撃疲労をテストします。

他のテストと異なるポイントは、破損するまで衝撃を高めていくのではなく、衝撃を与えるたびにホイールを回転させます。

これにより目に見える破損が起こるまでに、すべてのスポークホールへ衝撃を与えられ、すべてのスポークホールに対して100回以上の衝撃を加えることができます。

このテストはより実際の走行を想定したテストとなっており、実際に起こりうる破損の原因の改善に役立てられました。

このグラフは、衝撃回数と最大衝撃結果を掛け合わせて算出されたスコアのグラフです。

グラフを見てわかるように前作と比較し、新型Mシリーズが耐久性すなわち、信頼性が大幅に改善されていることが分かります。

M5 = M525より30%向上
M6 = M630より47%向上
M8 = M730より21%向上
M9 = M930より10%向上

他社と新型Mシリーズの比較

上記のテスト3を使用し、同じカテゴリの他社ホイールと比較しました。
その結果ENVEのMシリーズは他社と比較し、実際の強度と耐久性において優れた結果が出ました。

M5 PRO

M5Proはクロスカントリー系のホイールでは最軽量というわけではありませんが、クロスカントリー系のホイールにおいて強度と重量が高レベルで両立されています。
このテストでは最も軽いホイールが最も壊れやすいことが確認されました。

M5を基準に見てみると競合他社Aは強度が40%低下したのに対し重量は11%しか低下しませんでした。重量と強度はトレードオフの関係にありますが、M5Proは軽量化を進めながら、乗り心地、耐久性のバランスを追求して設計されました。

M6

M6は競合他社よりもわずかに軽量でありながら、衝撃耐久性は約40%向上しています。

重量と耐久性を高い次元で両立しています。

M8

グラビティ系のホイールはどれだけ安心して使用できるかが重要です。

M8は競合他社と比較して衝撃強度が30%高くなっていることや重量がわずかに軽量であることを示しています。

M8の本当の魅力は重量や耐衝撃性では見えない部分にあり抜群の乗り心地が得られます。

テスト結果から

本当に重要なことはテスト結果ではなく、結果からどう改善できるのか、どうよくできるのかを追求していくことです。

リムに少し柔軟性を持たせることでサスペンションやタイヤがより多くの衝撃を吸収することが可能になります。
同じ強度を持つ硬いリムであればMシリーズと比較した場合、実際に吸収できる衝撃の量は少なくなります。

今回のMシリーズではリアのビードを広くし、M9 Proでは引き続きリムストリップを使用しており市場には同じ機能を持つ製品は他にありません。

ワイドフックレスビーズ
保護リムストリップ

安全に安心して使える新型Mシリーズ

絶対に壊れないリムを作ることは可能ですが、非常に硬く、重たいものとなってしまうため実際に使用するには現実的ではありません。
理想的な乗り心地を保ちながら、想定されるは衝撃以上の耐久性を持つことが重要です。しかしリムの限界を超え使用し続けているといずれ故障してしまいますが、その時にコントロールされた状態で安全に故障することがライダーが安心して使用できることに繋がります。

特にM8とM9Proでは自動車と同じような衝撃吸収システムとなるよう、新しいカーボンラミネート技術を開発し、完全に走行不可となるような壊れ方でなくコントロールされた小さな壊れ方をするようになりました。

プロチームと協力し、テストラボとテストライド両方で繰り返しテストを行うことで、ENVEの精神である「REAL WORLD FAST(現実世界最速)」を達成するホイールが生み出されました。

ENVEの18年以上にわたる研究データを使用し、競合他社以上の衝撃耐久性を備えたうえ、故障する場合も安全に故障するよう開発されたMシリーズは、トレイルを走る全てのライダーにとって安心して使用できるリムとなっています。