
ついに、GRODEO(グロデオ)本番の朝がやってきました。
泣いても笑っても、目の前に横たわるのは150km、獲得標高2,500mのユタの大地。
朝6:50、ライダーブリーフィングが始まり、主催であるENVEのメンバーから昨日への感謝と「今日はとにかく楽しもう!」という熱い挨拶が響き渡ります。
午前7:00、ポリスカーの先導によりパレードランがスタート。そこから最初のグラベル区間まで約1時間、ノンストップで集団を引いてくれるという贅沢な幕開けでした。

「SDA王滝」を余裕で上回る、標高1,500m〜1,700mでの波状攻撃

走る前は、日本のマウンテンバイクの過酷なレース「セルフディスカバリーアドベンチャー王滝」を全体的に平べったくした感じかな? と想像していました。
しかし、GRODEOはそんな甘い予想を余裕で上回ってきました。
とにかく「長く踏み続けなければいけない区間」が長い!
さらに、標高1,500m〜1,700mという、日本では完全に峠の頂上付近にあたる高地を延々と走り続けるため、薄い空気がじわじわと脚と肺を削っていきます。
日本から用意してきたエナジー類の補給食がこれほど愛おしく、必須だと感じたことはありません。
葛藤の第2フィード
そして諦める意味を失う折り返し地点

正直に白状します。
まだ序盤とも言える2個目のフィードの時点で、私の体力残量はすでにレッドゾーンに突入していました。
事前の公式アナウンスでは「Stravaの計測セグメント以外は、絶景を見ながらみんなでおしゃべりを楽しんでね!」みたいなアットホームな雰囲気だったはず。
しかしフタを開けてみれば、そこにあるのは完全なる「サバイバル」。……あれ? 楽し気なファンライドのイメージとだいぶ違うぞ? と脳裏をよぎりましたが、いや、これは完全に私の力量不足です。
とにかく「ここで脱落するわけにはいかない」と(半分白目を剥きながら)自分を鼓舞しペダルを回し続け、ようやく折り返し地点である3つ目のフィードにたどり着いた時、私はある“悟り”を開きました。
「よく考えたらここ、アメリカのバックカントリー。この先へ進むにしても、ここでリタイアするにしても、結局は自力で走って帰るしか選択肢がないんだな‥」
(本当は最終回収してもらえる)
そう気付いた瞬間、不思議と後ろ向きな言い訳を探す意味が消え去り、「よし、目の前のトレイルを全力で楽しんで進もう」と覚悟が決まりました。本来の目的に還った瞬間です。
ちなみに、感動を共にするはずだった佐野さんと、Grumpyたけちゃんの姿は、第1フィード以降、驚くほど綺麗に一切見ていません。
「どこかで追いつくのかな……? いや、それより自分の心配をしよう」そんな風に仲間を気遣う余裕すら、薄い空気の中に溶けて消えていきました。
斧投げにホットドッグ!生き返るための「リアルオアシス」

そんな限界寸前の私(たち)を救ってくれたのが、コース上に6箇所設置されたフィードゾーンでした。
単なる水分補給の場所ではありません。
ドリンクはもちろん、アメリカのサイクリストの間では定番?のめちゃくちゃ酸っぱい「ピクルスジュース(足攣り防止の特効薬!)」が用意されていたり、エナジー、フルーツ、そしてホットドッグまで!
さらには前日に噂していた「斧投げ(Axe throwing)」のアトラクションまで本当に用意されていて、過酷な道中において文字通りの“リアルオアシス”として、心と体を極限から引き戻してくれました。
やはり看板はゼロ。
「途中迷子を楽しむ覚悟」をしておいてよかった
事前の警告通り、コースには看板(矢印)が本当に1つもありませんでした。
完全に100%のセルフナビゲーション。
前夜に「途中迷子を楽しむ覚悟が必要」と話していましたが、本当にその覚悟をしておいて、そしてルートをきっちりダウンロードしておいて命拾いしました。
それでも、最後のセクションの入り口はあまりにも難解でした。
「え? ここ?」と思わず目を疑うような、完全に閉まっているゲートの脇をすり抜け、さらに生い茂る草をかき分けて進むようなワイルドすぎるルート。これぞまさに、ENVEが誇るバックカントリー・アドベンチャー?!

コースやライドの様子が伝わりにくいと思いますので‥
Grumpyたけちゃん、充実のレポートはこちらからどうぞ。
7:00スタート、17:00ゴール。
Fredからの問いかけに、僕たちの答えは……

最後は、昨日プレビューライドで走ったシングルトラックを激しく下り、見覚えのある最終セクションに合流。なんとか、五体満足でゴールのENVE本社へと滑り込みました。 朝7時にスタートして、到着したのはほぼ17時。約10時間に及ぶ壮絶なライドが終わった瞬間でした。
スタッフや現地の人々に温かく迎えてもらい、誇らしげなフィニッシャーバッヂを受け取り、冷え切ったコーラで乾杯。

体に染み渡る炭酸と共に、これまでに味わったことのないような、言葉にできない圧倒的な達成感が押し寄せてきました。



立ちあがろうとすると足が攣る!数十回と攣る!
ふと周りを見ると、他のライダーたちは何時間も前に帰ってきていて、すでにシャワーも浴びてさっぱりした顔でビールを飲んでいます。
そこへ、またもサッパリしてるENVEのFredがめちゃくちゃいい笑顔でやってきて、こう聞いてきたのです。
「どや? めっちゃハードやったやろ? 来年もまた来たいか??」
強烈に疲れ果てて、体はバキバキ。
でも、私たちの心からの答えは、もちろん「Exactly! YES!!」でした。

GRODEOという、唯一無二の場所
何せ、これほど満足度の高いイベントが他にあるでしょうか。
GRODEOは、ただのファンライドイベントではありません。
前日のファクトリーツアーで見た「モノ作りの現場」、スタッフのバイク置き場で見た「開発中のリアルな熱気」、そして今日走った「ENVEの製品を育て上げた圧倒的なフィールド」
そのすべてが2日間にギュッと凝縮されていました。
この2日間を通すと、ENVEがどのようなプロセスで機材を開発し、なぜこの形になったのかがよく理解でき、さらにこのブランドに惚れ込んでしまう。そんな魔法のような場所なのです。
実際、会場にはENVEを使っていないライダーももちろん参加されていましたが、これだけの体験をさせられたら、間違いなく全員「次はENVEが欲しい!」と思わされているはず。
ENVEが作った究極の裏庭「GRODEO」
グラベルの歴史の最高峰を、全身で体感できる場所でした。


