富士ヒルクライムは、ただ軽い機材を選べばよいレースではありません。
勾配は比較的ゆるく、速度が乗る区間もある。
だからこそ、タイヤの転がり方や空気圧の違いが、走りの感触に出やすいコースです。
今回は、筧五郎さんが富士ヒルで使用したENVEタイヤと、試走から本番にかけて感じた空気圧の違いについて紹介します。
何barが正解か、という話ではありません。
自分の体重、ホイール、タイヤ、路面に合わせて、どう空気圧を探っていくか。
そこに、チューブレスの面白さがあります。
この記事はこんなライダーにおすすめ
・富士ヒルでタイムを狙いたい方
・チューブレスタイヤの空気圧に悩んでいる方
・ENVEタイヤの使い分けを知りたい方
・人の空気圧を参考にしつつ、自分に合う設定を探したい方
富士ヒルでは、普段の練習と同じ空気圧がそのまま合うとは限りません。
路面、速度域、集団内での走り方まで含めて考えることで、タイヤの転がりと安心感を両立しやすくなります。
ENVEタイヤは、レース内容に合わせて選ぶ
ENVEのロードタイヤには、筧さんが「決戦用」と呼ぶRace Dayと、普段の練習からレースまで使っているSES Road Tireがあります。

Race Dayは、薄くて軽いタイヤ。
SES Road Tireは、ロードレースにも使える少ししっかりしたタイヤ。
筧さんはこの2つを、レースの内容やパンクリスクに合わせて使い分けています。
富士ヒルでは、Race Dayではなく、普段から使っているSES Road Tireを選択。
ここまで練習してきたレースを、パンクで終わらせたくないという判断をしました。
富士ヒルでは、普段の空気圧がそのまま合わなかった
筧さんが普段の練習や平坦系のレースで使う空気圧は、フロント3.8bar、リア3.9bar前後。
ただ、富士ヒルではその数値がそのまま合うとは感じなかったと話しています。
富士スバルラインは、普段走っている道とは路面の感触も速度域も少し違います。試走では、まず普段に近い空気圧で走ってみたところ、タイヤが路面に少し食われるような、抵抗感のある“ネチャっとした感触”がありました。

転がってほしい場面で、少し重さが残る感覚です。
そこで、試走では空気圧を4.4bar前後まで上げて確認。
すると、ホイールが惰性で転がり続けるような感触があり、富士ヒルの路面には少し高めの空気圧が合う可能性を感じたと話します。
空気圧は低ければ快適、高ければ速い。
空気圧は、そう単純には決まりません。
タイヤが潰れすぎず、跳ねすぎないところを探ることで、上りでも失速しにくい走りにつながります。
ホイールが変われば、同じタイヤでも空気圧は変わる
空気圧を考えるうえで、筧さんが触れていたのが SES4.5 と SES4.5 PRO のリム内幅の違いです。
普段使っているSES4.5はリム内幅が25mm。
このホイールにENVEのタイヤを合わせると、タイヤ幅は30mm前後まで広がります。
一方で、富士ヒルで使用したSES4.5 PROはリム内幅が23.5mm。
SES4.5よりも少し内幅が狭くなるため、同じタイヤを使ってもタイヤの広がり方が変わります。

リム内幅が少し細くなると、エアボリュームの感じ方も変わります。
そのため、普段SES4.5で使っているフロント3.8bar、リア3.9barの感覚を、そのままSES4.5 PROに当てはめることはできません。
筧さんが富士ヒルで空気圧に悩んだ理由のひとつは、ここにあります。
いつもの空気圧では、タイヤが路面に食われるようなネチャっと感が出る。
でも上げすぎると、グリップやタイヤのしなやかさが薄れる。
SES4.5からSES4.5 PROへホイールが変わることで、同じタイヤでも空気圧のちょうどよいところは変わります。
空気圧は、タイヤだけで決めるものではありません。
ホイールとタイヤを組み合わせた状態で、実際に走って探る必要があります。
本番では、試走と同じように路面を選べない
試走とレース本番では、同じコースでも走り方が変わります。
試走では、前方の路面を見ながら走れます。
荒れた場所を避けたり、段差で少し腰を上げたり、衝撃を逃がす余裕もあります。

しかしレース本番では、前走者の後ろにピタッと付く場面が増えます。
前の選手が荒れたラインに入れば、自分もそこに入らざるを得ない。
路面を選べない状況が出てきます。
筧さんは、本番ではフロント4.4bar、リア4.5bar前後で走ったものの、状況によってはもう少し上げてもよかったと振り返っています。
チューブレスは、空気圧の違いが走りに出やすい
筧さんは、チューブレスについて「タイヤの動きが分かりやすい」と話しています。
0.1bar、0.2barの違いでも、走りの感触が変わる。
3.8barと4.0barの違いだけでなく、3.95barのような細かな設定でもフィーリングが変わります。
これは、チューブレスの面白さでもあり、難しさでもあります。
タイヤ本来の動きが分かりやすいからこそ、空気圧を少し変えただけでも、転がり、グリップ、接地感の違いが出る。
レースで結果を狙うなら、「だいたいこのくらい」ではなく、自分に合うところまでとことん詰めたくなります。
筧さんも、人の空気圧をそのまま当てにしすぎない方がいいと話しています。
体重、ホイール、タイヤ、路面が違えば、合う空気圧も変わるからです。
今日は4.0barで走る。
次は4.1barにしてみる。
雨なら少し下げてみる。
そうして試すことで、自分の中に空気圧の引き出しが増えていきます。
シーラントはMuc-OffのMTB用を使用
筧さんは、富士ヒルでMuc-OffのMTB用シーラントを使用しています。
入れた量は約40g。
ロード用よりもねっとりしていて、膜を張る感覚があると話します。

筧さんは、ロードタイヤでもMTB用シーラントが好みだと伝えられていました。
ロードシーラントに比べてドロっとしており、パンクしたときに止まりやすい感覚があります。
太いタイヤも、富士ヒルでは選択肢になる
筧さんは、ブロンズクラスを目指すようなライダーであれば、少し太めのタイヤも合いやすいと話しています。

太めのタイヤは、エアボリュームを確保しやすく、路面からの細かな振動を受け止めやすい。
ペダリングのかかりや、登りでの安定感にもつながります。
もちろん、25Cを好む選手もいますがあまり見かけなかったとのこと。
切り返しの軽さや、反応のよさを重視するなら、細めのタイヤを選ぶ理由もあります。
大切なのは、流行だけで決めないことです。
まとめ
筧五郎さんの富士ヒルでのタイヤ選びと空気圧調整は、機材スポーツとしての自転車の面白さをよく表しています。
使用したタイヤは、軽量なRace Dayではなく、普段から使っているSES Road Tire。
パンクでレースを終えないために、走り切る安心感を優先した選択です。

普段の空気圧は、フロント3.8bar、リア3.9bar前後。
富士ヒルでは試走を通じて4.4bar前後まで上げ、転がりの軽さと路面からのネチャっと感のバランスを探りました。
チューブレスは、0.1bar単位の違いが走りに出やすいシステムです。
だからこそ、人の数値をそのまま使うのではなく、自分の体重、ホイール、タイヤ、路面で試すことが大切になります。
タイヤ、ホイール、シーラント、空気圧。
そのひとつひとつを詰めていくことで、富士ヒルのような長い上りでも、最後まで踏み続けやすい走りにつながります。



