ENVE 4.5 PRO 徹底解剖 【ハブ・スポーク編】

限界のその先へ。「軽さ」の数字に惑わされない、真の速さを知る方たちへ。

2024年、UAEチーム・エミレーツと共に数々の勝利を掴み取ったENVE。しかし、エンジニアたちの視線は既にその先にありました。2025年シーズンに向け、コルナゴ社の新型バイク導入に合わせ、タデイ・ポガチャル選手が求めた究極の命題、それは「最高のホイール」の再定義でした。

ENVEが出した答えは、単なるカタログスペック上の軽量化ではなく、実走環境で最も速く走るための理論、「REAL-WORLD FAST」の徹底的な追求です。

今回、その中核を成すハブとスポークに焦点を当てます。

1. ハブ・エンジニアリング:軽さと剛性のパラドックス

多くのメーカーがグラム単位の軽量化競争に明け暮れる中、ENVEは開発段階で一つの事実に突き当たりました。「過度な軽量ハブは、正義ではない」という真実です。

例えば、ポルシェやメルセデスが、シャーシ剛性を犠牲にしてまで車重を軽くしないのと同じ理屈がここにはあります。ライダーがダンシングをし、強大なトルクをかけた際、軽すぎるハブボディはねじれを生じ、ベアリングの回転を阻害します。これでは、ライダーのパワーが推進力ではなく、ねじれへのストレスとして消費されてしまいます。

「PRO」スペックのハブは、適度な剛性を確保することで、高負荷時でも極めてスムーズな回転性能を維持。ライダーの体重とパワーを余すことなく路面へと伝達します。

2. ベアリング:ポリシーを覆してでも求めた「回転の質」

これまで耐久性を重視し、セラミックベアリングの採用に慎重だったENVEが、このモデルのために開発したのは「ステンレスレースのセラミックベアリング」。

独自のステンレスベースのレースを採用することで、セラミック特有の弱点を克服。特筆すべきは、そのエイジング性能です。新品時がピークではなく、乗り込むほどに当たりがつき、回転抵抗が減少していく——それはまるで、慣らし運転を終えた高性能エンジンのように、オーナーと共に成長する機材であることを証明しています。

3. スポーク戦略:カーボンスポークを採用しなかった「明確な理由」

「なぜ、流行のカーボンスポークを使わないのか?」 理論派のあなたなら、この問いの答えにENVEの真髄を感じるはずです。

確かにカーボンスポークを使えばホイール単体の重量は軽くなります。しかし、カーボンスポークはその太さゆえに、風の抵抗(空気抵抗)が増大します。ENVEの風洞実験と実走テストのデータは明白でした。「軽さ」よりも「空気抵抗の削減」の方が、実世界では速いのです。

4.5PROはSESシリーズに採用されるSAPIM CX-RAY(ベルギー)ではなく、イタリアAlpina社のステンレススポークを採用。SAPIMよりわずかに0.2g重いこのスポークを選択したのも、官能的なライドフィールへのこだわりゆえ。その代わり、ニップルをブラス(真鍮)からアルミに変更し、外周部で確実な軽量化(-14.4g)を実現。
快適性と軽さを両立させるための、妥協を許さない構成です。

4. ドライビング・フィール:40ノッチの官能

駆動の要となるラチェットには40ノッチを採用。さらにリターンスプリングのテンションを、歯飛びしないギリギリのラインまで弱めるチューニングを施しました。これにより、空走時のドラッグを極限まで低減しています。

スペックシート上の数値と、実際のライドフィールの乖離(かいり)を許さないあなたへ。 これは単なる高級なホイールではありません。物理法則に基づき、勝利のために論理的に組み上げられた、F1マシンのような機能美の結晶です。

¥649,990 (税込)

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