理想の乗り味を実現するためにENVEがアメリカ生産にこだわる理由

10月にENVE International & OEM Sales Manager、Fred Mackey氏が来日し、広島でジャンルもライドスタイルも異なる10人でENVEライドを開催しました。

参加したメンバー含め、実際にENVEを使用したことがある方からは、どんなライドスタイルの人でも

「ENVEはいい」

と口を揃えて語ります。

なぜ世界トップレベルのプロからアマチュアレーサー、ホビーサイクリスト。
ロード、グラベルなど車種もバラバラながら同じ感想を持つのかその理由や、製品の裏側にある思想や背景などフレッド氏に聞きました。

ENVEライドの様子はこちらから


30年近く経った今もなお、カーボンはまだ進化の途中にある素材

製品の前にENVEが得意とするカーボンという素材について改めてご紹介します。

一般的にカーボンは完成された素材のように思われがちですが、自転車界に投入されてから30年近く経ちましたが、実際にはまだ未知の部分が多く、可能性に満ちた素材です。

レーシングカー、戦闘機、宇宙開発など、極めて高度な分野で研究開発が続いていることからもわかるように、カーボンは今も進化し続けています。

自転車業界でこそ一般的になりましたが、
自動車分野ではまだ広く普及していないほど、扱いが難しく奥が深い素材なのです。


20年以上カーボンに携わってきた
エキスパートとしてカーボンを最大限活用

ENVEは、このカーボンの可能性を最大限に引き出すため、プリプレグ製法を採用。特殊な樹脂を含浸させたカーボンシートを、角度と積層を緻密に設計しながら貼り合わせていきます。

積層の違いは特性の違いとして現れるため、開発には膨大な試行錯誤が不可欠です。

その結果、現在展開しているSESシリーズやMシリーズは、構想から製品化までに約5年もの開発期間を費やしています。


試作量 他社比8倍以上
圧倒的な試作量が最高の品質をつくる

実際、製品が生まれるまでにどれほどの試作を行っているのでしょうか。

一般的なメーカーであれば、デザインを海外の工場に製作依頼。試作品が本社に届き、テスト、フィードバックを得るという流れでは1ヶ月は通常難しく。早くても2ヶ月、3ヶ月以上かかってしまいます。

しかしENVEでは1週間で新たなサンプルが作られるため、他社に比べ8倍以上もの圧倒的な試作量で商品を開発することが可能です。


例えば、Mシリーズの場合 4モデル×2サイズ(27.5インチ / 29インチ)に対して、乗り心地や耐久性を高めながら軽量化させるにあたり、

1モデルにつき100本以上

もの試作を作成したといいます。

過去にも“T-BIRD” RIM “FLEX-WALL” RIM “BUMPER-BEAD” RIM などを試しテスト。

その中で、ユーザーフレンドリーでパンクしにくい構造を模索し、テストと実戦導入を繰り返しながら完成度を高めていきました。


試作量を増やし理想の乗り味を実現させる
ことがMADE IN USAを続ける理由

1商品あたり、100本以上試作品を作成することを可能にしているのが、ユタ州オグデンにあるENVE本社です。

  • 製品企画・設計
  • 金型を作るCNCマシン
  • カーボン加工専用エリア
  • 成形・焼成工程
  • 機械的強度テストエリア
  • ROAD / グラベル / MTB をリアル環境で試せるフィールド
  • そして、自転車を愛するエンジニア・スタッフたち

これらすべてが一つの場所に集約されていることで、1週間という驚くべきペースで新たな試作品を作成することが可能となり、“理想の乗り味”を実現するための細かなチューニングを無限に繰り返すことができます。

さらに、月に一度、未来を見据えた企画ミーティングが開かれ、次なる革新が練られています。


2023年以降UAE Team Emiratesとの共同開発でさらに進化

近年はUAE Team Emiratesとの契約により、プロレベルの要求に応えるためのPROシリーズの開発がさらに進化しています。

SES AERO PRO ONE-PIECE BARは、シーズン中にライダーのフィードバックを受けて微調整を重ねたモデルです。

SES AERO ROAD BARをベースに、現行プロツアーのスピード、路面状況、UCI規定などを考慮しながら、フレア角度やしなり具合を調整。

その試作品も100セット以上に及びました。

実際にポガチャルはシーズン中に異なるフレア角のハンドルを使用しており、製品開発段階で多くの試作品が生まれていたことが伺えます。

これほどの開発密度は、外部工場に委託していては実現できません。
膨大な試作と微調整を高速で行える環境こそ、ENVEがアメリカ自社生産にこだわる理由なのです。


アメリカ生産へのこだわりが生む“本当の速さ”

ENVEが守り抜く「REAL WORLD FAST-現実世界最速」という哲学。
それは、ただ風洞実験の数値が優れているというだけではありません。

現実の世界で、
「速いと感じる」
「安心して踏み切れる」
「長時間乗ってもストレスがない」

そのすべてをバランス良く満たす製品をつくること。そして、そのための開発プロセスを妥協しないこと。

この姿勢こそが、ENVEがアメリカでの自社生産にこだわる最大の理由であり、世界のライダーがENVEを信頼し続ける理由なのです。


実際に本社に訪れより深くENVEを知る

このインタビューの後、ENVE本社のある、アメリカ ユタ州 オグデンに訪れました。
どんな土地で、どのような環境でENVEの製品が生産されているのかなどENVE訪問記は次回へ続きます!