今回の「SES 4.5 PRO」プロジェクトにおいて、最も大きな変更点の一つはリムのカーボン素材にあります。
UAE Team Emiratesからの要求と素材の進化
UAEチームから求められた課題は明確でした。
- SES 4.5の優れた空力形状と性能を維持したまま、さらなる軽量化を実現すること
- UCI(国際自転車競技連合)のレギュレーションに準拠した形状であること

これらの要望に応えるため、SES4.5PROは通常のカーボン繊維よりも細い糸を使用した特殊なカーボンシートを採用しています。

このシートは特性を維持しながら極限まで薄く作られており、非常に高価な素材ですが、
従来のSESシリーズと同様に「プリプレグ方式」で緻密に積層されています。
クラフトマンシップが光る製造工程
製造工程においても、軽量化への徹底したこだわりが見られます。
ブラダー(成形用の袋)抜き穴の改良
従来のSESシリーズでは2cm×4cmほどの長方形だった抜き穴を、直径2cmの円状に変更。さらに、その蓋をスポークホールと併用する設計にしています。

SES4.5PRO/SES4.5 比較

SES4.5 PRO

SES4.5
メイド・イン・ユタ
米ユタ州の自社工場にて、熟練の職人が一本ずつ手作業で作成しているからこそ、このような複雑で精緻な加工が可能となっています。


進化したリム内部の形状と機能性
リム・ビード・シート(RIM BEAD SEAT)
フックレスリムの軽量化を突き詰めるため、成形後に精密な切削加工を施しています。リムの内幅は23.5mmですが、実際にタイヤビードが接する部分は25mmとなっており、タイヤの装着感と安定性を高めています。


SES4.5 PRO

SES4.5

リム・ビード・ロック(RIM BEAD LOCK)
低圧走行時でもタイヤのビードが内側に落ちにくいよう、ビードロック形状が最適化されています。これにより、コーナーや荒れた路面でも高い信頼性を確保しています。

ワイド・フックレス・ビード(WIDE HOOKLESS BEAD)
このシステムにより、低圧設定でもリム打ちパンク(ピンチフラット)のリスクを大幅に軽減します。リムの端にある約1.5mmの「段差」が衝撃を分散させる役割を果たします。

レースにおけるメリット
これらの技術革新により、軽量化と信頼性が両立されました。ライダーにとっては、低圧での運用が可能になることでタイヤ選択の幅が劇的に広がるという、実戦において非常に大きなメリットをもたらします。


