シクロクロス年齢別日本王者であり、ヒルクライマーとしても名高い筧 五郎さん。
18歳、高校3年生から50代を迎えた今日まで、40台以上のバイクを乗り継ぎ、数々の機材を使い倒してきたが、ENVEのフラッグシップモデル『SES 4.5 PRO』を徹底解剖します。
単なる「軽い・速い」といった表面的な言葉ではなく、構造から紐解くその真価とは。
テストコンディション
- 体重: 60kg
- タイヤ: ENVE SES RACE DAY TIRE 29C チューブレス
- 空気圧: 3.8 BAR

1. 「加速」と「巡航」:高回転でこそ活きる真価
漕ぎ出しの軽さは、ホイール重量の数値通り「当たり前に軽い」。信号待ちからのリスタートでストレスを感じることはまずない。
特筆すべきは加速の質だ。時速40kmまでは極めて気持ちよく伸びていく。一方で、それ以上の領域を維持するには相応のパワーを要求される側面もある。
この特性から、本質的には「登坂能力を極限まで高めたオールラウンダー」であることに気づかされる。
筧さんはこう付け加える。
「このホイールの進化を感じるためには、高めのケイデンス(回転数)で走ることを念頭に置いてほしい。常に加速感を与え続けることで、そのポテンシャルは最大化される」
2. 登坂とアップダウン:急勾配における「最強の武器」
低速域に落ちやすい急勾配ほど、このホイールの軽さは圧倒的な武器になる。
特に勾配8%を超えるセクションでの反応の良さは、他のディープリムホイールとは一線を画す。
常にホイールを回し続ける入力は必要だが、
それに応えてくれる反応の速さは「タイムを削る」ための純粋な性能だ。

3. 下りの安定性と「非接触スポーク」の恩恵
軽量ホイールにありがちな「下りの不安定さ」は、
29Cという太めのタイヤと低圧運用によって完全に打ち消されている。

さらに特筆すべき点は、「横風への耐性」だ。
SES 4.5 PROのスポーク構成は、交差部分同士が接触しない設計となっている。
右からの横風を受けても、左へ過剰に流される感覚がない。
フロントとリヤでリムハイトと形状を変えることで、エアロ効果を高めながら、横風さえも推進力に変えてしまうかのような安定感を生み出している。

スポーク同士が干渉せず、風に押された瞬間にしなやかに受け流し、すぐに元の状態へ戻る。その挙動が、ホイールの剛性感を“硬すぎない絶妙なバランス”に仕上げている。
この感覚こそが、SES 4.5 PROならではの安心感につながっている。

4. ラチェット40T:
SES4.5では60Tのラチェットが採用されていたが、
SES4.5PROはあえて40Tが標準装備されている。
足を止めた時に回転抵抗を重視しており
世界最高の選手が求めた「ON/OFFのメリハリとしっかり掛かる」バランス。
それが最初から組み込まれているのが、この「PRO」の証だ。

結論:どんなコースで、誰が使うべきか?
SES 4.5 PROは、万人に優しいだけのホイールではない。 しかし、「富士あざみライン」や「乗鞍」といった急勾配を含むコースで、本気で勝ちたい、あるいは自己ベストを更新したいと願うライダーにとっては、これ以上の選択肢はないだろう。
高剛性なディスクロードに、あえて「しなやかさと回転の軽さ」をもたらすこのホイール。
ポガチャルと同じフィーリングを手に入れたとき、あなたの走りは確実に次のレベルへ引き上げられる。
「本気でタイムを出しにいくなら、これを選ばない理由がない」


筧 五郎(かけい ごろう)
名古屋市内で56サイクルを主催、ローラー教室など自転車普及に努める。
乗鞍優勝、Mt.富士ヒルクライム総合優勝、シクロクロス全日本年代別チャンピオンなど輝かしい実績を持つ。競技だけでなく、自転車旅も楽しむ自転車大好きライダー。1975年生まれ168cm 60kg。
次回は、佐野淳哉さんがインプレッションします。
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