グラベルバイクはなぜワイドタイヤ化が進むのか?

未舗装路を自転車で走る文化は、現代のグラベルバイクが登場するよりはるか以前から存在していました。

ランドナーやツーリングバイク、シクロクロス、MTBなど、それぞれ異なる文化の中で悪路走行が楽しまれてきました。

現代のグラベルバイクは、こうした複数の要素と、2000年代以降に成長した北米のグラベルレース文化が合流し、2010年代に専用カテゴリーとして確立されました。

近年のグラベルシーンにおいて、最もめざましい進化を遂げているのがタイヤのワイド化です。

かつて主流だったサイズから、なぜ現在では 45c や 50c といった極太タイヤが人気を集めているのでしょうか。

グラベルタイヤの歴史的移り変わりと、ワイドタイヤがもたらす圧倒的なメリットについて紹介します。


1. グラベルタイヤの変遷:シクロ〜超ワイド時代へ

「グラベルバイク」というジャンルが誕生したのは今から15年ほど前ですが、それ以前に「ロードバイクで悪路を走る」というスタイルは昔からずっと存在していました。

初期:シクロクロス・ランドナーの流用(2010年以前)

グラベル専用バイクが一般化する前は、シクロクロスやツーリングバイク、改造されたロードバイクなどが使われていました。

北米のグラベルレースでは、シクロクロスバイクやツーリングバイクをベースに、タイヤやギア比を変更して使用する例が多く見られました。

過渡期:フレーム、タイヤ技術が進化(2013年〜2020年前半)

ディスクブレーキの普及や専用バイクの誕生などにより、装着可能なタイヤサイズの選択肢が拡大しました。
2014年にはパナレーサーからGRAVELKINGが登場するなど、グラベル専用タイヤの選択肢も増えていきました。

太いタイヤのクッション性、走破性をそのまま700cホイールでも実現できるようになり、
2010年代後半には、700×38C〜40C前後が多くのグラベルバイクで採用される一般的なサイズとなりました。

この頃、WTBが提案した「ロードプラス(650b×47c)」が話題に。
650Bホイールを使うことで、外周径を「700×28c」と同等に保ちつつ、エアボリュームだけを劇的に増やすという考え方でした。

さらにワイド化&高速レース化(2020年前半〜)

2023〜2024年ごろから、北米のトップカテゴリーでは45mm以上のタイヤや、50mmを超えるXCタイヤの採用が目立つようになりました。

そして近年はリム内幅25〜27mm前後のグラベルホイールが増え、一部ではENVE GSES 6.7のように、3内幅35mmというワイドリムも登場しています。

フレームとフォークのクリアランス拡大に加え、太いタイヤを安定して支えられるワイドリムが普及したことで、700Cのまま50Cや2.0〜2.2インチのタイヤを使用できるバイクが増えています。


2. なぜ「太いタイヤ」が選ばれるのか?――耐衝撃性と走行安定性

現在の北米グラベルレースでは、表記45〜50C前後が主要な選択肢となっています。

比較的滑らかで高速なコースでは45C前後、荒れた路面やパンクリスクの高いコースでは48〜50C以上が選ばれる傾向があります。

プログラベルレーサー アレクセイ・バーミューレン(Alexey Vermeulen)選手は、
北米のグラベルレースでは先頭集団の速度が上がり、メカトラブル後の復帰が難しくなっているため、パンクリスクを抑える目的で太いタイヤを選ぶ選手が増えていると説明しています。

特に高速の集団内では前方の岩を確認できないまま衝突することがあり、その衝撃に耐えるエアボリュームが重要になります。

https://enve.com/blogs/journal/bigger-is-better-with-alexey-vermeulen

太いタイヤはトラブル対策だけではなく、さまざまな点で太いタイヤのメリットがあります。

太いタイヤのメリット
・荒れた路面でのトラクション確保
・身体的疲労の劇的な削減

○荒れた路面でのトラクション確保

荒れた路面では、細く高圧なタイヤは車体や身体を上下に揺らし、振動によるエネルギー損失を生みます。
太いタイヤを路面に合った空気圧で使用すると、凹凸への追従性が高まり、荒れた路面での振動損失を抑えられる場合があります。

○身体的疲労の劇的な削減

太いタイヤを適正な空気圧で使用すると、細かな振動や衝撃を吸収しやすくなります。

長時間走行では、手腕や上半身に伝わる振動を抑え、疲労の蓄積を軽減する効果が期待できます。


3. 日本のグラベル事情:日本に「極太タイヤ」が必要?(スタッフ考察)

北海道など一部地域では北米のグラベルレースのようなフィールドも存在しますが、
日本の林道には、一般的な北米の高速グラベルレースよりも、勾配や路面の荒さが大きい場所があります。

日本のグラベル環境は「限りなくMTBに近い過酷なコース」になりがちです。

そのようなコースでは、タイヤ幅だけでなく、ブレーキ性能、ギア比、ハンドリング、サスペンションの有無まで含めて車種を選ぶ必要があります。

「可能な限り太いタイヤを履かせる」というのも、日本のグラベル事情では一つの選択肢かもしれません。


まとめ

グラベルバイクはまだまだ進化途中であり、ライダーごとにさまざまな試行錯誤をして楽しんでいます。

アメリカ、ヨーロッパ、アジア、そして日本。
それぞれで地形が全く異なります。

「日本に適したカスタム」を研究してみるのも一つの楽しみかもしれません。